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世界の終わりのお伽噺 【Märchen vom Ende der Welt】  作者: 早生しあ
Ⅰ 『虚偽と虚言の戯れ言』
9/17

 アディが意識を楽しみに向けてくれて、少しだけほっとした。暗い表情は見ていたくない。

 俺とアディは幼馴染みだった。父親同士が昔からの親友で、俺とアディは生まれたときから兄弟みたいに育った。今でも俺は兄弟だと思ってる。アディはどう思ってるかはわからないけど。

 アディの両親が亡くなったときに俺は当然アディが家に来ると思ってた。アディは俺の弟みたいだったし、お互いにお互いの親を実の親みたいにも思ってたはずだ。

 なのに知らない遠くの家が突然アディを養子にして、それ以来連絡もできなくなってた。手段はあったんだけど、アディに裏切られたような俺の気持ちが許さなかったとその当時の日記に嫌というほど綴っていた。

 今思えば、あの時はまだ10歳くらいで子どもだったのに、アディがどうこうできるわけもない。俺だってそのはずだ。と自分のことを思い出しながら俺はアディとの関係を思い出すようにする。

 そう、思い出さないといけない。

 彼が幼馴染みで、俺がカリスだということを。

「なに考えてんねんー?」

 ナータンは俺を見て首をかしげる。

 俺は自分の考えを一瞬にして閉ざした。我にかえったというのか、我を忘れたというのか。

「早よ行こうや。メシ行って礼拝行って今日は図書館とかインドアな施設を回ろうやー。楽しみやねんでー」

 急かされて歩き始める。

 水捌けの良い石畳の道から流れ出た雨水は、道の両側に植わっているハーブの土を水に沈める。その後はさらに端を流れる水路へと。

 司祭コース寮通りは小さな散歩道のようで、天気の良い日は気持ちが楽しくなる。

 図書館か。まだ行ったことはないけど、かなり大きいと聞いている。中には選ばれた生徒しか入れないフロアもあるとか。

 学校が始まる前に学校の施設は把握しとかなきゃな。絶対にお世話になるところなんだし。

「ヤマグチくんも行くやろ? 今までいつも部屋でこもっとったけど」

「めんどいからな」

 二言目にはめんどい、めんどいとアディは言う。

 そういえば礼拝に行くのだって今日が初めてじゃないだろうか。

 アディは俺やナータンより先にここに入寮してるのに、初日に吐いて倒れてから引きこもってたらしいし。実際俺が入寮してからもほとんど外出してない。食事に行くくらいだ。

「まあ、学校始まる前に色々見とくのって必要だよ。必要になってから慌てるのは良くないしね。それに久々に遊び回りたいし、昔みたいに。ナータンも付き合ってくれるよね?」

「もち、かまへんでー」

 司祭コースの寮の出口である門を抜ける。

 門扉は通常時間はいつも開いている。消灯時間が過ぎたら閉められるはずだけど。夜の9時から朝の4時までだったかな。

「今日の礼拝休みでいいのにな」

 一度も出てないくせにそういうことをぼやくアディは門を出てすぐ左に曲がった。

 左に数十メートル行った先には食堂がある。



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