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世界の終わりのお伽噺 【Märchen vom Ende der Welt】  作者: 早生しあ
Ⅰ 『虚偽と虚言の戯れ言』
6/17

 行方不明?

 なんのことだ?

 俺はパソコンの画面を見る。画面の半分を占める部分に森と学校のシルエットが映っていた。

 画面向こうの学校の全体像は、ひどく薄気味悪く見える。受験の時や、制服の採寸なんかで行ったことのある自分目線での学校とは全く違って見えた。

「学校の敷地外を占める森の中に大きい湖があるらしいんや」

 ナータンは俺に話してきた。

 地図を思い浮かべる。学校の敷地の周りは全部森だった。その間を縫って線路が走っていたはずだ。

 閉鎖されたここへは、月に二度の開放日にのみ特別列車が普段は閉じられてる線路を使ってここに来るはずだ。森に行くには、外部ならすぐなのか。確か入寮時の説明では森には立ち入り禁止だったはず。特に夜か。夜は行かないよな。門限もあるし。

「そこで数日前に男子大学生の五人がキャンプやか胆試しやかをしたはずなんやけど、そのままおらんなったって」

「みんな? 五人全員?」

「そやで。昼間に捜索に出た話によると、荷物と服はあるらしいんやけど、人間自身がおらんて」

 人間自身なんて変な言い方をするな。

 そう思いはしたが、俺は近くで行方不明の事件があることの方が気になった。

「単なる失踪か思たら、ここしばらくで結構消えとんねん。みんなこの湖辺りやわ」

 ナータンはサイトのニュース一覧を見せてくれた。ちらりとURLを見たが、なんとかドットヘブンみたいな変なところだ。一覧にはこの森での事件のみピックアップされているみたいだ。

「夜中に会っていた近くの学校の音楽コースの男子生徒と、聖職コースの女子生徒。学校に出張で来ていた司教と学校職員のシスター。これが失踪者?」

「せやで。消える理由ないやん、出張に来てんのとか」

「でも聖職コース……僕たちの司祭コースや女子のシスターコースとかは異性との付き合いは駄目だと思うんだ。司教と職員のシスターも同じだよ? だから逃げたとかあるんじゃないかと思うんだけど」

 ナータンはうーんと唸る。納得はしてないようだな。

「かも知れへんな。やけど、とにかく湖がそういう逃げたい気持ちとか増幅すんのかも知れんから、ジブンも気ぃ付けや」

 俺は逃げたいとか思わないよ。と考えてふとアディの顔を思い出す。

 俺もアディもナータンも、将来は教会で働き、信者に教えを説く聖職者……司祭を目指す学校に入学する。

 アディは自ら望んで養父母を説得してここに来たはずなのに、いつも将来の話になると表情が曇っていた。

 なりたくない、なんてことを一度だけぼやいてたな。

 アディなら逃げる可能性もあるか。どうしても嫌なんだったら。

「とりあえず気を付けるよ。湖には行かないようにする」

 特にアディは行かないように見張るべきだよな。

「ほんまに気ぃ付けや」

 ナータンは念を押してきた。そんなに心配なのか。



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