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世界の終わりのお伽噺 【Märchen vom Ende der Welt】  作者: 早生しあ
Ⅰ 『虚偽と虚言の戯れ言』
5/17

 シスターエマはもう一度俺に挨拶をしてから、今度は上の部屋へ。

 アディがたった一人でいる部屋だ。ルームメイトの入寮が遅れてるとか話してたのを聞いた気がする。

 俺は寝る気もしないから、メールでも確認しようかと部屋に戻った。

「ええわぁ。ここで選択肢を間違えてもうたらどうなるか……!」

 ナータンはパソコンでゲームをしている。

 みんなまだ15歳のはずだ。なのにゲームのパッケージには銀のシールに青い文字で18なんとかって書いている。

「子どもはこっから見たらあかんで」

 画面を覗く俺に振り返りもせずにナータンが言った。そして画面を隠すつもりもないらしい。

 両手を広げても覆えない大きさの画面の中では、水着姿の女の子が「ねえ、私がもし……」とか言っている。

 突っ込みどころはいくらでもあるけど、まあいいや。

 ベッドに腰かけて枕側にある机の上から携帯を取る。

 画面ロックを解くと、案の定メールが入っていた。

 フォルダ分けをしている『アディ』『ナータン』『師匠』『家族、友人』の中で師匠フォルダに新着があった。

 その他大勢やメールマガシンの振り分けなしフォルダのものはあまり見ない。読まずに消すこともざらにあるな。

 たったひとつの新着メールはいつも通りタイトルなしの本文が短めに書かれているだけだ。

『元気か?』らしい。

 元気に決まっている。

 昨日も一昨日も同じことを聞き続けてるけど、劇的に健康状態が変わることはあまりないよなと毎回思う。

「兄さんも心配性だよな」

「兄さん? ジブンひとりっ子や言うてた気がしてんけど、兄でもおんの?」

 ナータンが何故か反応した。

「あ、うん。実の兄ってわけじゃないんだけど、勉強を見て貰ったり、相談に乗ってもらったりした兄のような人なんだ。年上の友人、のほうがしっくりくるかもしれないけど。ビョエルンって名前なんだけど、ビョエルンさんとかも言いにくくて」

 ああそういえば、名前を声に出したのは久しぶりだな。寮に来る前は結構な頻度で会ってたけど、すっかり兄さんと呼ぶのに慣れてしまってた。

「ナータンはここ以外に友人はいるの?」

 携帯のメールチェックをしている姿とか見たことない。ここの友人も、話すのは俺くらいじゃないか。入学式以降はやっぱり変わるんだろうけど。

「友人? 最高の奴がおったで。もうオレのことなんか忘れとんのやけど。そやな、カリスとヤマグチくんみたいに仲良かったわ」

「そっかぁ」

 『おった』『仲良かった』全部過去形なんて、これ以上突っ込めるわけがないじゃないか。

 質問した自分にため息が出た。

「気まずならんでえーで。ただオレはあれが思い出すんを待っとんねん」

 本気なのか冗談なのか、ナータンはそういうと立ち上がった。ゲーム画面は消えて、普通のニュースサイトが開かれてる。

「昨日も森で行方不明なんやて」



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