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再会……なんだけど

「えーと……ちょっと罠に嵌っちゃって。力尽くでも中々外れなくて、どうしようかなあって」

「どうしようって。これ、かなりモンスター用の罠よ!? よくこんなのに挟まれて足取れないわね!?」


 あ、やっぱりそういうアレだよね。結構シャレにならない継続ダメージが入ったはずだし……。

 幸いにも、そのまま継続ダメージでダウンということにはなりそうにないけど。


「あはは……いっそ取れちゃえばポーションで回復できるんですけど」

「何言ってるのよバカ! まさか貴女、また無茶してるの!?」

「え、いや……ちょっと襲撃犯を追いかけただけで、そんな無茶って程の事は」

「襲撃犯……それってまさか。最近王都に出るっていう武姫連続襲撃事件?」


 武姫連続襲撃事件……そういえばミッションとか言っていた気もするけれど。

 武姫が武姫を襲っている、ってことなんだろうか?


「黙ってるってことは……そうなのね。そうよね、貴女のパーツを狙わないはずがないもの」

「へ? パーツ?」

「そうよ。襲撃犯に襲われた武姫は、皆色んなパーツを奪われてるらしいわ。でも武姫を持ってるのなんて貴族がほとんどだし、一体何処の命知らずかって噂の的なのよ」


 言いながら、カルラさんは僕の足に噛みついているレッグトラップを調べている。


「ジャックの奴がいれば一発なんだけど……アイツ、まだ出先から戻ってきてないのよね。何処ほっつき歩いてるのかしら」


 ごめんなさい、たぶんまだハルクラ島にいるんじゃないかと思います。置いてきぼりです。

 たぶんアグナムさんが送っていってくれると思います。


「それより、この罠よね。どうしたもんかしら。あんまり他のパーティの連中に借りは作りたくないし、アリスを見られたら何を言われるか分かったもんじゃないわ」

「あー……」


 僕の足に噛みついたレッグトラップのせいで、僕の足からは機械部分が見えてしまっている。

 これで人間と言い張るのは無理がありすぎるし、現代における武姫のレア度を考えると、確かに騒ぎになるであろう事も理解できた。

 けれど、外せないならシュペル伯爵のお屋敷まで運んでもらえればどうにかなりそうだ。

 そう言おうとしたその時、路地裏に影がスッと差す。


「此処に居たのか、カルラ。帰りが遅い、と……」

「げっ」


 その声を、忘れるはずもない。

 恐る恐る見上げてみれば、そこに居たのは忘れようもない、フリードさんの姿。


「アリス……」

「えーと。こ、こんばんは?」


 フリードさんの視線は段々と下に下がっていき、僕の足元のレッグトラップでピタリと止まる。


「……どいていろ、カルラ」

「え? ちょ、ちょっとフリード?」


 無表情に近い顔になったフリードさんに戸惑いつつも、カルラさんは僕から離れてフリードさんの後ろに下がる。


「罠を斬る。動くなよ、アリス」

「ええっ!?」


 そんな無茶な解除方法聞いたことないよ!?

 思わず後ずさりそうになる僕にフリードさんはもう一度「動くな」と言うと、鞘から剣を抜き放つ。


「あの、フリードさん落ち着いて? 他に何か方法が」

「無い。俺が冷静でいられる時間もそう長くない」

「何それ怖い!」


 僕が叫ぶと同時に剣が閃き、何かが断ち切られるような音が響く。

 まさかと思い見下ろしてみると……見事に真っ二つに断ち切られたレッグトラップがそこにあった。

 ……まあ、僕に深く噛みついているせいで、そこは手作業で外さないといけなかったんだけど。


「……痛そうだな」

「あ、あはは。大丈夫。ここにポーションがあるから」


 僕が鞄から出した初心者用ポーションを飲むと、足の傷は何事も無かったかのように消え去って。

 それを見ていたカルラさんが驚いたような声をあげる。


「相変わらず凄いポーション持ってるわね」

「あはは……」

 

 初心者用ポーションのはずなんだけどなあ。

 どれだけ技術水準下がってるんだろう……。


「立てそうか、アリス」

「あ、うん。大丈夫だよフリードさん」


 僕がジャンプに一回転まで加えて立ち上がってみせると、フリードさんは「そうか」と頷いてくれる。

 どうやら冷静タイムは継続中のようで、僕としては一安心だ。


「……で、カルラ。何故こんなことになっていたんだ」

「ほら、例の武姫連続襲撃犯。アレのせいらしいわよ?」


 その言葉にピクリとフリードさんの眉が動き、その瞳が僕を睨むように見る。


「その犯人は、逃げたのか?」

「え? あ、うん」

「そうか。見つけたら俺が足を一本斬っておく」

「怖っ!?」


 僕もカルラさんも思わず引いてしまうが、どうにもフリードさんは本気の目をしている。


「そ、そんな事しなくても。相手も武姫っぽいし……」

「武姫!? え、てことは犯人も貴族ってこと? そりゃ面倒な事件になりそうだわ……」

「そうだな。貴族の足を斬ると面倒そうだ」

「ちょっと、やめてよ。私まで同類に見られるじゃないの」


 フリードさんを小突いたカルラさんは、僕に視線を戻してくる。


「で、アリス。貴女今拠点はあるの?」

「あ、うん。シュペル伯爵のところに。犯人追いかけて飛び出してきちゃったから、戻らないと」

「送っていこう」


 戻らないといけないや、と言う間もなくフリードさんはそう言ってくる。


「だが、その前に聞くが……シュペル伯爵と契約したのか?」

「え? いや、してないけど」

「そうか」


 うーん。もしかしなくても僕と契約したいってことなんだろうなあ。

 でもなあ。

 僕が本当に「プリンセスギア」なら……そう簡単に機士なんて選べるはずがない。

 だって、僕と契約するってことはデビルフォースに立ち向かうってことなんだ。

 そんなものに、気軽に巻き込んでいいはずがない。


「……どうした、アリス」

「え? いやいやいや! なんでもないよ!?」


 言いながら、僕はちょっと不審だったかなあ……と。

 この身体が人間なら冷や汗を流していたかもしれない慌てっぷりを披露してしまう。

 それに突っ込まれなかったのは……フリードさんの優しさなんだろうなあ。

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