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2013年、小さな地球

二年後、ヴンダーアイランドはサービス終了となった。結局リアルな体感を味わえるRPGというアプローチは成功せず、部屋で寝転がってテレビでプレイするゲームには敵わなかったのだ。

 結局のところ、実際に体を動かすのは面倒くさいとか、観光程度で十分という側面だけが目立ってゲームとしての面白さはあまり評価されなかった。やりこみ要素はあるのだが、繰り返し時間をかけてプレイする価値があるとはプレイヤーは思わなかったのだ。

 クラフトアベルク・ネクストはすでに二〇一一年の暮れの時点から、ウムラウトを用いたテーマパーク建設を計画し、大手レジャー企業との業務提携を発表した。定期的にコンテンツを入れ替えることで、プレイヤーに新しい興味を継続的に与え、リピーターを増やす計画らしい。ヴンダーアイランドで見られた中途半端なテーマパークからの反省だった。


 私たちの制作チームはすでに目立った活動はほとんど無かったが、今回サービス停止を受けて正式に解散されることになった。

 国見さんはテーマパークのミニチュア作りを担当することになり、再びネクストと仕事をすることになった。他の四人は契約が終了し、スタジオから去ることになった。神谷君は別の部署へと異動になるらしい。石川さんはネクストで、テーマパークの制作に携わることになった。


 嘘つきの作り上げたゲームは結局目立った成果は挙げられなかったが、今後のエンターテイメントに関して一定の方向性を示した。低コストと短時間で作り上げる仮想現実空間は様々な用途での利用が考えられるようになった。例えば映画の撮影、スポーツなど大型娯楽施設などの可能性が提示された。私たちのゲーム制作の取り組みは評価されたわけではないが、今後また見直されることもあるかもしれない。



 昼休み、私は松浪さんに会った。制作チームが解散してから一週間経ったくらいだった。

「この間、仕事の依頼があったのよ。死んだ人の絵を描いて欲しいって。死んだ人にまた会って会話したいというのよ」

松浪さんはそう言った。

「出来るのかい」

私は言った。

「さあ。まだ話は詳しく聞いていないわ。でも今回は重たい仕事よ」

私は学習する嘘のことを思い出した。あれは人間とそっくりの感情を持った嘘だった。そして失敗していった。黒崎さんはそれで嘘つきをやめてしまった。松浪さんは大丈夫なのだろうか。私のそんな表情を感じ取ったせいか彼女は言った。

「大丈夫よ。私は、大丈夫よ」

彼女の表情からは気負いは感じられなかった。

「そうだね。松波さんなら大丈夫だね」

私は時間が来たので立ち上がった。

「ねえ、今度温泉にでも行きましょうよ」

「こないだ一緒に行ったばかりじゃないか」

「また行きたいのよ」

松浪さんはそう言った。



 私は今、子供向け人形アニメの仕事をしている。ぬいぐるみを動かす仕事だ。本物そっくりに見せる嘘ではなくて、物を動かす嘘だ。しかし、人形の表情と仕草には注文が付けられている。難しい嘘になりそうだった。


 ここ最近はぬいぐるみを動かす嘘は付いていなかった。だいぶ久しぶりな気がする。最初についた嘘はイナのぬいぐるみを動かしたことだった。あれから練習して小さな地球の嘘をつくようになった。イナの一番気に入っていた私の嘘だった。


 私の小さな地球は嘘である。しかしイナが感動したものは間違いなく本物だったのだ。小さな地球の放つ青い光で照らされるイナの顔を思い出した。今日はとってもいい嘘がつけると思った。


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