第5話*陸ちゃんぶっ倒れ!!
展開が信じられなかった・・・。
どこまでを夢と持ってくればいいだろう。
でこチューといい次はほっぺ・・・ありえない。
あたしは机にひじをついたままうわの空だった。
そんなあたしが先生に指されなかったことがありがたい。
「落とす為の作戦さぁ〜」
昼休み。唯一あたしの心が落ち着く場所、図書室で真奈美と向かい合わせで椅子に座った。
「落とす?どこに?」
「まぁ鈍感だからいいけど・・・」
真奈美の言葉が理解できない。落とすって、落とし穴??まさかぁ・・・。
「でも陸の男嫌い治してくれるんだ♪あいつも結構いいとこあんじゃん♪」
「でもあたしには迷惑なんだよぉ・・・」
あたしの不安とストレスは増大するのだ。迷惑しかない。
「ホント、あんた朝より顔色悪いよ。保健室行けば?」
「頭痛い・・・帰ったほうが楽かも」
あたしは頭をさするがもちろん痛みはやわらげられない。
鏡を持っていないから顔色は判断できないけど手の甲を見ると青白い。
川崎のことを話していても考えるほどの力がない。
「やばいって陸・・・今すぐ保健室行ったほうがいいよ!」
「あたしはそうすぐばてるやつじゃあないよ・・・」
「いやいやばてるの問題じゃなくて・・・」
「・・・5時間目の理科まで我慢する」
あたしは椅子から立ち上がった。ちょっとふらっとしたけどそれほどダメージはない。
「陸理科好きだもんね・・・でも今日ぐらい我慢しろ!!」
「ダメなの――。学級委員の仕事があるしそれに――――」
あたしは後を言わずに図書室から出た。
教室に戻ると北島がいた。そうじの時間が近づいたため運動場から帰ってきたのか。サッカーでもして遊んだのだろう。ジャージには砂をたくさんつけていて、汗もあふれ出ていた。
北島の隣には川崎がいた。
「あ、陸ちゃん。もー俺のジャージ砂まみれ。陸ちゃんのジャージ貸してほしーなぁ♪」
ゴンッ。
笑顔で言ってきた北島の後頭部を川崎はグーで殴った。
「こんな普通の女子でも貸さねぇのにこんな『男嫌い』が貸すわけねぇだろ!」
そう言ってあたしをチラリと見る。
『男嫌い』で悪かったわね!!
あたしは言いたいことをこらえてジャージに着替えに行こうとしたが・・・
物が二重に見える。北島が2人いる・・・。
そう思った瞬間、あたしの目の前には教室の天井が現れ・・・真っ暗になった。
「陸ちゃん!!」
北島の声が聞こえたが応答できない・・・っか最初っからできないか・・・。
気がつくと保健室にいた。
ベッドの周りには仕切りがあり、1人なので落ち着く。
保健室の何にもない天井を気が遠くなるような時間、見つめていた。
「神崎さん?」
ハッ。
その声の主は保健の先生の成田先生だった。
「ずいぶん無理したみたいねぇ・・・顔真っ青だったわよ。でも今は・・・少しひいたわね」
あたしは頬を手のひらでさする。まだ冷たいけど・・・。
「教室には戻っちゃダメよ〜♪また倒れて運ばれてくる運命よ♪」
「え・・・あたし、運ばれて来たんですか?」
「彼氏ぃ??カッコ良かったじゃない♪」
「え・・・どんな・・・」
先生はもう後を聞かず、薬品の整理をし始めた。
「コラ!まだ寝てないとまたぶっ倒れるわよ!」
「・・・ハ〜イ」
彼氏じゃないんだから分かんないんだけどな・・・。
運んだの先生じゃなかったんだ・・・。
近くにいたのって川崎か北島だったよね?
でもあんな2人があたしなんか運んでくれるんかなぁ?
お礼・・・言いたいな。
『ありがとう』・・・って。