第49話*今でもあなたを
「啓ー!!」
制服に身を包み、啓に向かって手を振る。
「ん〜??その笑顔、クラス一緒だったとかぁ〜??」
「いいから見てよ!クラス替え!!」
あたしは啓の背中をぐいぐい押す。
「お〜3組ねぇ・・・陸一緒じゃん」
「しかも見てよ!!海も・・・真奈美も一緒なんだよ!!」
「プッ、懐かしいな。中学校に戻ったみたいだな」
「そうだね・・・もぅ高校3年だもんね」
あんま啓と進展ないけど・・・。
「陸!!久しぶりに一緒のクラスじゃん!!4年ぶり!!啓も!!」
「うん4年ぶり!!」
「陸〜あんたが“男嫌い”治ったからあたしは安心して過ごせるよ」
少し大人っぽくなった真奈美。
背が伸びても中身は変わらない海。
3年生はみんなそれぞれ違うクラスだったけど、友情の関係は変わらない。
ただ1つだけ変わったことがあった。
真奈美と海がくっついたことだ。
このことにはあたしもびっくりした。
なんかずっと一緒にいられそうですっごく嬉しかった。
そして、あの時とは変わってしまった啓。
『たらし』は完全に無くなり、あたしだけにつくしてくれる。
あたしも、啓のためにならつくせるよ。
「まだキス止まりなのぉ〜??」
ニヤニヤしながら聞いてくる真奈美にあたしは赤面した。
「なっ・・・やらしいわね!!それ以上できるわけないじゃない!!」
「そんなんだからぁ〜。啓はしたいって思ってんじゃないのぉ〜??」
真奈美は勝手に啓に話題をふった。
すると啓は動揺する様子もなく、
「陸が許してくれたらな♪」
その言葉に真奈美はあたしの背中を啓に向かって押した。
「わっ」
タイミングよく啓はあたしを受け止めた。
「じゃ〜あ、あたしたちは先に教室入ってるねぇ〜♪」
手を振りながら姿を消す。
「ちょっ・・・真奈美!!」
手を伸ばしたその時、
スポッ
まぬけな効果音を出してあたしの左てのエンゲージリングが抜けた。
「あっ、啓!!それはあたしの・・・」
啓は天を仰ぐように指輪を持っている手を振り回す。
「ん?あたしの?」
「っ・・・。1番大切なものっ・・・」
「ばーか、1番大切なものと言ったらこの俺だろ?」
たらしこむような笑顔で言われる。
「ふふっ、ばーか、あんたが1番だよ」
「よくできました」
あたしの頭をなでてくれる。
「じゃ返し・・・」
「ダーメ」
「えぇ?」
「だって、俺からはめさせてくれなかったじゃん。コレ」
「えっ・・・だってそれは・・・」
「神崎陸。あなたは川崎啓を一生愛し続けることを誓いますか?」
「・・・え?」
「誓いますか?」
「あ・・・はい」
けどまだ指輪ははめてくれない。
あたしも言えって??
「えと・・・川崎啓。あなたは神崎陸を一生愛し続けることを誓いますか?」
啓はその言葉に笑顔たっぷりで言った。
「誓います」
すると、指輪をはめてくれた。
4年たった指輪は傷は増えていたけれど、一際きれいに輝いていた。
「結婚式みたいだねっ!」
「だって、いつかはあげるんだぜ?予行練習♪」
「え?それって・・・」
啓は両手であたしの手をつかんだ。
「陸・・・」
「はい?」
「結婚しよう」
その言葉に反応が遅れた。
「っ・・・・??」
「俺たち高校生だからまだ早ぇえかもしんねぇけど・・・陸のこと大切にしていく自信はある」
え?あたしなんかで、本当にいいの?
「俺じゃあ、物足りないか?」
そんなことない!!
「啓・・・」
「ん?」
「これからもよろしくお願いします」
精一杯の笑顔を見せた。
それにつられて啓も笑った。
「陸」
「なに?」
「愛してる」
『たらし』?『本気』?疑ってしまうような軽い言い方。だけれど、なぜか許してしまう。
そして優しく、キスをした。




