第48話*好きだから
唇をそっと離したとき、思った。
『後悔してしまったらどうしよう』
一瞬思った。
でも――――――――――――――――
『俺は、後悔しないよ』
心がそう言っている。
「啓・・・」
わずかな陸の声が聞こえた。
陸の顔は桜のように火照っていた。
「傷つけないで、いてくれる?」
陸の不安に俺はちょっと戸惑った。
でも、誓ったんだ。
「大事にするよ。一生」
陸にしがみついた。
小さな体はちょうどよい温度を保っていた。
『たらし』は捨てるんだ。
無駄にカッコつけるのも、“こいつ”の前だけにするんだよ。
俺からは女子に話しかけないようにするし、笑いかけもしない。
あんまりやりすぎもよくないけど、託すんだ。俺の全てを。“こいつ”に。
一生??それってプロポーズ??
俺にはまだ早ぇえよ。
陸は物じゃねぇけど、俺の1番に、大切なもの。
陸の“男嫌い”が消えている今、俺は“女好き”を消してしまわなければならない。
「お前・・・よく頑張ったな」
「当たり前じゃん・・・啓が楽しみにしてたんだから」
『俺はどんなふうに振り向かせてくれるか楽しみにしてるからな♪』
「たしかに・・・言ってたな」
笑みをこぼした。
「いっぱい聞きたいことがあるんだ」
「・・・分かってる」
「たくさん分かってもらいたいことがあるんだ」
「・・・分かってる」
俺は強く陸を抱きしめた。
「俺も、たくさんのことが、いっぱいある」
「・・・分かってる」
「陸、お前変わったな」
「啓と出会ってからだよ」
「俺と?」
「あんたと出会ってからの一言一言で、あたしは変われたんだ」
「なぁ陸」
「ん?」
「俺のこと、いつから好きだった?」
陸は、静かに目を閉じた。
「多分、啓と出会った時から」
その目からは、1粒の雫が落ちた。