第4話*ストレス&川崎
あたしの体の中には少しずつストレスがたまっていた。
時間がたっていくうちに体が鉛のような重さになってきた。
肩にダンベルでも乗せてる感じ・・。
体だけでない。頭もバットで殴られたみたいにガンガン痛む。
このストレスの原因・・・それは、
『女たらし』川崎 刑。・・・じゃなかった、川崎 啓だ。
昨日あいつと学級委員になった時からあたしの男嫌いの症状が出まくっている。
これ以上あたしが“あいつ”と関わるとあたしの体と精神が危険だ・・・。
特に今日の朝はだるい。頭痛と鉛の重さの症状が顔にもう出ている。
「ちょっとぉ陸、大丈夫なの?顔色悪いって・・・」
真奈美は心配してくれるがあたしの耳には聞こえていない。
あたしはただひたすら長い長い通学路を歩いていくだけだった。
あたしの歩き方は周りから見たらクリョマニョン人だったという。
その長い長い・・・道のりを歩ききり、ようやく学校のくつ箱についた。
よく考えたら今日あたし声を発していません・・・真奈美とも喋んなかったな・・・。
上履きを床に丁寧に置くあたしに対して・・・
ボスッ。
変わらぬ音で“あいつ”はあたしの隣で床に上履きをたたきつける。
また“あいつ”か・・・。
あたしは心の奥底では分かっていたが、ストレスのため、体が勝手に動く。
あたしは首を動かし、横目で“あいつ”を見た。
すると、“あいつ”はあたしの目線に気づいたのか、眠そうな目をあたしに向けた。
目が合った瞬間あたしは反射的に目をそらした。
「おはようさん、男嫌い」
耳元で聞こえる音量であたしの横を通り過ぎ、教室へ向かっていった。
また1つ・・・ストレスが、増加した。
昨日と同じように静かな教室に入ると誰もいない。
あれ・・・川崎教室にいかなかったのかな・・・?
なんでいないの??
あたしは疑問に思いながらも自分の机へと席ついた。
その時、
ガラッ。
教室のドアが開き、入ってきたのは北島だった。
「あれ?陸ちゃんもう来てたの?啓はどこいった?」
突然の北島の質問は首を縦か横に振るだけじゃ答えにならなかったのであたしはあせった。
「ま、無理させないほうがいいね。男嫌いだし」
北島・・・あたしが男嫌いって分かってたんだ・・・。
「じゃ〜俺とも喋るの嫌でしょ?首振るだけでいいからさ」
「・・・・・・」
「啓にでこチューされた時、嫌だった?」
あたしはおそるおそる上目使いでゆっくり首を縦に振った。
「あいつも超女ったらしだからなぁ〜いろんな女子に手ぇ出すもんね。陸ちゃんまで手ぇだすとか・・・。これから、“あいつ”と学級委員やってける?」
首は縦に振ろうとしたが、迷いがあった。
本当に・・・大丈夫なのかな・・・?
対照的なあたしたちが男女共同作業できんの・・・?
ガラッ。
「あ、啓。どこ行ってたんだよ〜」
「わり、職員室にプリント取りに行ってたんだ」
そう言って北島に大量のプリントを見せる。
「ほぃ、お前の分。配っとけよ」
川崎が差し出すプリントをあたしは震える手で受け取った。
が、
あたしがプリントと川崎の手を引き離そうとしても離れない。
川崎は力任せに何故かプリントにしがみついている。
「!?」
あたしははっと顔を上げて川崎を疑問の目で見た。
これ以上あたしが引っ張るとプリントが破れてしまう。
それでもあたしは負けずにプリントを離さなかった。
その時、手に暖かいものが触れた。
やわらかい感触だったのでまさか・・・とは思ったが、見てみると鳥肌が立った。
「―――――――――――!!?」
手には手が、川崎の手が重なっていた。
あたしはこのいきなりの困難に体が反射しなかった。
手をほどこうとしても川崎の手は動かない。
「お前、男と手ぇつないだこともねぇの?」
川崎がやっと口を開いた。
「ぅ・・・ぅ・・・・ぅん」
あたしの言葉もやっと出た。
「さすが男嫌い♪」
『さすが』の意味が分からなかった・・・。いい意味なの??
「その『男嫌い』、俺が治してやるよ」
・・・は?
あたしの口はあんぐりと開き、手が重なっているのも忘れてしまった。
「えー!啓陸ちゃんの男嫌い治しちゃうの??」
「この『男嫌い』治さなきゃ一生男と付き合えないぜ?もちろんお前とも」
これは陸に聞こえないように海の耳元で言った。
「そうぢゃん!!」
あたしの『男嫌い』治すって・・・
「俺に任せとけって、陸」
CHUッ
次は身に覚えのある感触が、頬に来た。
3秒後、あたしの背筋には冷たいものがはしった。
ほっぺにチュー・・・。
「あれ?反応なし?コレは最初からいけるんじゃない??」
のはずもない。
「うっきゃ―――――――――――――――――!!」
あたしの叫びが教室・・・いや、学年中に響きわたった。
こんなやつが、あたしの『男嫌い』なんて治せるの?!