第47話*啓の気持ち
今でも覚えてる。
怖かった。
自分のことが何1つ思い出せない。
真っ白だった。
何も、考えられなかった。
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そして今、俺は再び同じ人物から告られた。
思い出した。あの時あの場所での・・・できごと。
誰の手も借りたくなかった。
俺の記憶が塗り変えられそうだったから。
怖かった。
俺、こんなに弱かったんだな・・・。
『男嫌い』
懐かしい響き。
前は男の前では真っ赤で無言になって・・・可愛かったのに、
今ではなんか・・・たくましくなったな。
俺と違って。
『たらし』なんて、俺は過去の思い出から逃げていただけだったのかもな。
本気な恋なんてものはどうでもいい。
女なんてたくさんいる。
昔はそうだった。
今は?
俺、本気でこいつに恋してる。
「俺、お前を傷つけるのが怖かった」
やっと、やっと言える。
俺の、本当の気持ち。
「え・・・?それ、どういうこと・・・?」
いきなり話す俺に神崎は唖然としていた。
「夏海にされたことがムチャクチャくやしくてさ、俺は本気で好きだったのに。そんときは『たらし』じゃなかったんだぜ?研修生みたいなもん。でも、夏海のことは本気で好きだった。でも、すごい裏切られて俺はもう女子なら誰でもよくなった。普通に友達以上のことなんてできるし、誰に託したって構わなかった。俺、汚れてた。だから、純粋すぎるお前なんて背負えなかった。きっと、告白をことわるよりずっとひどいことする。そう思ってた」
「川崎・・・記憶が・・・」
「俺は!!お前のこと、好きだった!!」
「えっ・・・・・・」
「でも、お前が傷つくのを見たくなかったから・・・伝えられなかった!!」
「・・・・・・・・・」
「今ままでつらい思いさせて、ごめんな?」
「じゃあ・・・・川崎・・・この指輪の意味・・・」
「あぁ、知ってるさ」
「・・・うそ・・・・」
「今度は俺から言うよ」
「え・・・・?」
俺は神崎の手を優しくつかんだ。
「好きだ。俺と、付き合ってください」
「・・・ハイ」
またいつもの泣き虫。
泣くなよなぁ。後始末は俺が困るんだから。
神崎の止まらない涙をおさえてやった。
そして、優しく唇に、キスをした。