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第44話*修学旅行の記憶

「っく、だりぃ〜な」


俺はエナメルバッグを持って家を出た。


「うぇ〜どっぷり夜みたいなじゃん」


俺は家から1分も経たない学校へとフラフラ向かった。


「午前6時半・・・ゲッ、あと1時間は寝られるじゃん」


バスのライトが点滅している正門のほうへ向かった。


「お〜川崎、早かったな。1番だぞ。お前〜だるそうにして1番張り切ってるんじゃないかぁ〜??」


「ち・・・ちゃいますよ!!」


んなわけないじゃん。くそ〜誰も来てねぇのかよ。


「ほら、3組のバス乗っとけ。くつろいでていいぞ〜」


俺はしぶしぶ乗り込んだ。


ガラーッと開いているバスの座席。


席は決まっていなかったので適当に後列のほうの窓際の席に座った。


「は〜だる・・・。修学旅行なんて暇すぎじゃーん」


「え・・・?」


「は?」


俺は固まった。バスの出口に“そいつ”がいたからだ。


「お〜『男嫌い』お前も早いじゃん」


気軽に声をかけたのに“そいつ”は顔を赤らめて前列の席に座ってしまった。


「あ・・・・・・」


少し分かった。“そいつ”は座席で少し震えていた。


「お〜い、そんな離れないでこっちこいよ」


俺は誘ってやったが動こうとしない。


「たっく・・・・」


せっかく誘ってやったのに・・・。


ちょっとした期待は押しつぶされた。



人が来るようになりバスの座席が埋まってきた。


“そいつ”の隣の座席は空いたままだった。


多分夏海が来るまで待ってるんだろう。


後ろから“そいつ”を見ていると、寂しそうで見ていられなかった。


「・・・たっく・・・」


俺はエナメルバックを持って席を立った。


「あれ?啓どこ行くの?」


「海、お前も来い」


「え?ちょっ・・・ちょっと・・・!!」






ドスンッ!!



「!!」


「・・・よぉ」


“そいつ”は目を丸くして隣に座った俺を見ていた。


「啓〜そこ俺が座りたかったのにぃ〜」


後ろの席で海がぶつくそ言う。


それはともかく、何だよこの距離。


“そいつ”は窓際にへばりついて俺との距離を少しでも長く置こうとしている。


「もうちょい近くに来てもいいだろ?」


首を振られた。


「あっれ〜??陸、啓と一緒に座ってるの?仲い〜じゃん!」


夏海が来た。


「べべべ、別にそんなんじゃ・・・」


否定すんなよ!!


「え〜じゃあ陸の隣座れないねぇ〜。海、隣いい?」


「お〜・・・別いいけど」


「陸いじめないでね〜啓♪」


こいつ・・・あんま関わりたくねぇ・・・。










長いバスの時間は過ぎ、修学旅行先の京都に着いた。


「わ〜俺京都なんて来たことねぇ。寺とか全然興味ねぇもん」


「あたしは来たことあるよ〜でも舞妓さんの格好してみたぁ〜い♪」


そういやこいつらと同じ班だったな・・・。


あいつらが仲良く話してたら俺は神崎としか相手がいねぇじゃねぇ〜かよ。


「神崎〜お前自由時間どこ行きたい?」


一瞬体をビクつかせて俺の方を見た。


「き・・・金・・・閣・・・」


消え入りそうな声で答えた。


「じゃあ行こうぜ♪ほら!お前らも!!」


「うん〜!!」


海と夏海はムチャクチャ張り切ってて俺らの前を速くも歩いた。


「うわっ・・・置いてくなよ。ほら、神崎行くぞ!」


「あっ・・・うん」


俺の隣を歩きたくないのか、一歩距離を置いて俺の後ろを歩く。


早くしないとあいつらに遅れてしまう。


でも、神崎を置いてってしまう。


「っく、早くこいよな!!」


「・・・えっ!?」


俺は“そいつ”の腕を引っ張り手を握った。


「ひゃあ!!」


俺は何も言わずに走り出した。


“そいつ”の顔はスイカの実のように真っ赤だった。


「お、お前が遅いからだよ」


俺はそっぽ向いて“そいつ”に言った。


『ごめんなさい・・・』


俺の予想ではこう言うかと思った。


でも・・・


「ありがとう・・・」


“そいつ”は笑顔でそう言った。


ちょっと・・・ちょっとだけ俺の心が掴まれかけた。




















そういう思い出があったことを、今、思い出した。





俺はその時神崎のこと好きだった??


それとも女子だから??


『たらし』だから??


分からない。


俺だって変な思い出思い出したくない。


つらかったこと・・・思い出したく・・・






『不安だ』





でも、それが唯一の鍵を握るかもしれない。















“そいつ”から告られた日を、思い出せた。


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