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第42話*学級委員


俺は学校へ1人でとぼとぼ歩く。


昨日決まってしまったクラスを一言で言えば、『つまらねぇ』


何でおとなしい女子ばっか俺のクラスなんだ??


しかも昨日のモップ(←陸のこと)は俺におびえてたし・・・。




「・・・・・・」





このクラスでやっていくしかねぇんだろうなぁ〜。





靴箱に1人の女子がいたが俺のクラスだったので話す余地もなくボスンと手荒くシューズを床に置いた。


「!!」


雰囲気で分かった。今俺の隣にいる女子は少し後ずさった。


・・・昨日のモップ(←陸のこと)だな。


別に、どうでもいいし。


俺は無言でシューズのかかとを踏みながら教室へ向かった。





教室に入ると誰もいない。


まるで死んでいるようだった。


俺の心みたいに。


やっとのことで足をひきずり自分の席に腰掛けた。


まぁ、廊下側の近い席だからよかったけど。


そのとき、重々しく教室のドアが開いた。


海か?それともさっきのモップ(←陸のこと)か?


俺は無言でじっとしていた。


「やったぁ!!教室だれもいなぁーい!じゃぁいいや!おっはよー!!」


な・・・何だ!?


いきなりのテンション高い声に俺はいすから滑り落ちそうになった。


つっこみたいとこだけど、ここは冷静さを保って・・・。



「・・・何言ってんの?」


「え・・・、!!!!!」


俺の予感的中。モップ(←陸のこと)だった。


“そいつ”は何も言えなくなって顔だけが赤に染まっていった。


でも、おもわず噴出しそう。


あー、今訳分かんねぇテンション見られて恥ッとか思ってんだなぁ〜。


「あんたまさか俺いないと思って1人で盛り上がってたの?」


大笑いするのもかわいそうだったので苦笑いで言った。


「ああああああ・・・あたし・・・えと・・・」


きゅうに喋り方がもどかしくなった。


つい、夏海を思い出してしまう。


全然違うと分かっているのに。


ドンッ!!


“そいつ”はドアを勢いよく閉めた。


その拍子に・・・


ガラッ・・・



「っへ?」



俺は口を開けたまま見ていた。



「キャ――――!!」


“そいつ”はモップに昨日のように襲われた。


もう・・・たえられねぇ!!





俺は大笑いした。


こんなにうけること久しぶりだ。


いつのまにバカ笑いするの忘れてた。


「くっ・・・お前・・・うける・・・」


腹を必死にこらえて声を出した。


“そいつ”はうんざりしていた顔からまたりんごみたいに顔を赤く染めていった。


笑いが収まると“そいつ”の周りにあるモップを片した。


「あ・・・ありがと」


小さな声が、“そいつ”から出た。



「おっはよ――――!!」


場の雰囲気を壊す声は海だった。


今いい感じじゃなかった??


もぉ〜海!!


「おぉ海、おはよ」


「あっれぇ〜??教室2人だけだったの?あっやし〜」


コラ!!変なことぬかすな!!


ま、ここは冷静に・・・


「別に・・・2人だからって俺はボ―――ってしてただけだし」


「啓のことだからさぁ、ハハッ」


俺はそう簡単に女子に手ぇださねぇよ!!


見ると、海は“そいつ”の机の前で質問攻めをしていた。


“そいつ”はいかにも困った表情。


おいおい・・・。


「海、やめとけって。そいつ困ってんじゃん」


俺はめずらしく止めた。


「あれ?今日お前らしくないじゃん。女の子と喋んないの?」


“そいつ”に俺の本性まだ見られたくない。


俺はどうどうとかわした。


「まっ、いっか・・・。そういやお前委員会何にすんの?一緒なろうよぉ」


海と一緒になるのは大賛成だった。


しかも肩ゆすってくるし。


「俺は・・・1番楽いやつかなぁ・・・」


眠いのか、あくびが出る。



「やってみようかな・・・」



小さな声が聞こえた。


俺でもなく、海でもなく、“そいつ”だった。



「は?」


やってみるって、何をさ??







はは〜ん、そういうことか。



俺は確信した。



2時間目の委員会決め。いろいろな選択肢があるが俺はもうすでに決まっていた。


「ではまずは学級委員から決めましょうね・・・立候補から聞こうかしら?」


昨日までの俺は話すら聞かなかった。


でも、今から違う。


手を上げる気配がなかった。


でも、1人、勇気あるものがいた。


「あああ、あたし、学級委員やりたいです!!」


でも、視線は“そいつ”じゃなくて、“俺”にあった。


右手が上がっていた。


そして、自然と声が出た。








「俺、学級委員します」










みんなが見てる。


さすがに上げている右手が震えてきた。


「他に立候補はいませんか?」


先生は俺以外に助けを求める。


そりゃぁ・・・な?俺は結構問題児だからな。


クラスに手が挙がる雰囲気が完全になくなると、先生は肩を落とした。


「川崎くん、学級委員頼んでもいいですか?」


先生は表面の笑顔で言う。


「大丈夫です。まかせてください」


きつさに耐え切れない手を左右にゆらゆら振った。


“そいつ”を見てみるとなんか絶望状態?


そんなに俺とが嫌なのかよ・・・。







「じゃあ学級委員は“川崎くん”と“神崎さん”に決まりでいいですね」









そのままその授業は終わり、担任からプリントの束をもらった。


「じゃーさっそく仕事だけど、このプリント2人で協力してねぇ」


先生は説明書きの紙をプリントの束の上に乗せ、俺に渡した。


少しよろめいたがこのくらいチョロイもんだ。


俺は教室へ向かった。


“そいつ”は俺の右斜め前の席。


先生の2人で協力して、という言葉を思い出して声をかけようとした。


「か・・・」


俺は名前を呼ぶのを止めた。


こいつ俺にびびってるよな・・・??


変に声かけたらこいつおびえるし・・・。


でも、そっちのほうがいい。





「おい」



俺は無愛想そうな声で“そいつ”呼びかけた。


「は・・・はひ?」


“そいつ”は予想通りの反応。


びくびくしながらこちら振り向いた。


「これに各専門委員の名前かけってさ」


“そいつ”はおそるおそる俺の持っていたプリントを受け取り机に向かった。


「あ、それ2人で協力してやれって言うからさ・・・」


神崎、反応なし。


「あのな、それ、2人で・・・」


反応なし。



ったくも〜!!



気づいてもらえないならこうするしかねぇだろ!!


俺は左手を“そいつ”の肩の上に置いた。


「神崎・・・だっけ?何度も呼んでんのにシカトすんなよ!」


俺は思わず手に力を入れてしまった。


同時に神崎の表情もゆがんだ。


やばっ・・・。


でも、違和感があった。


“そいつ”の体は小刻みに震えていた。


細くて白い腕には、鳥肌が立っていた。


猫のように反応が逆立っていた。


「お前・・・震えてんの?」


俺は少し気をゆるめて言った。


でも、神崎は答えなかった。


冷や汗をたらして俺の手に視線を集中させるばかり。


あ、この手が悪いんだな。


俺は手を離した。


すると神崎は大きなため息をついた。


こいつ、何なんだ??


「お前全然喋んないじゃん、朝と大違い・・・」


“そいつ”と目を合わせたが、すぐにそらされる。


まさか・・・こいつ・・・。


「まさか、男嫌いとか?」


冗談で半分聞いてみた。


でも、その答えは本物だった。


首を縦に大きく振った。


・・・え?


うわっ、男嫌い??俺、こいつと一緒じゃ『たらし』なんてできないじゃん。


でも、なんか・・・。




「へーえ、おもしろいじゃんあんた。やっぱこの1年間楽しくなりそう」


俺は少し人目を気にしたが、『たらし』の本能を見せた。


“そいつ”の額にキスをした。


「?」


“そいつ”は眉を曲げて今俺がやったことが理解できないようだった。


「あれ?反応しないの?ならもう1回やってあげようか?」


もちろん、もう1度するつもりなんてなかった。


でも、とっさに言葉がでて、“そいつ”をもう少しおちょくりたかった。








「1年間、ヨロシクな♪」



ん〜この言葉は俺には似合わねぇかも・・・。


“そいつ”はまだ反応なし。


ホンット、にぶいなぁ〜・・・。







そして数秒後。





「うっきゃ―――――――――――――!!」



想像以上の声が、“そいつ”から聞こえてきた。




「・・・ハハッ」


俺は思わず1人で笑った。


久しぶりに、笑顔をこぼして笑った。

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