第41話*初めての出会い
2年生に進級する頃には、俺は夏海のことなんて忘れて女子とばかり話していた。
こんなこと言ったら、あんなこと言ったら、俺はそんなことばっか。
俺はもう、れきっとした『たらし』になっていた。
そう、あの日も―――――――――――――――――――・・・・・・
「おっす、啓!」
「お〜はょ、海」
俺は眠い目をこすりながら朝のご挨拶。
「今年は同じクラスだったらいいなぁ〜」
「そうだな」
そう、今日から中学2年生。
毎年こうれいのクラス替え。
1年生の時はクラスは1番離れていてしまっていた。
でも、今年はその逆にもなりそうだった。
ふと、夏海のことを思い出した。
今年も同じクラスになってしまうのだろうかと。
別に、普通にあのあとも話せたから。
今の俺なら大丈夫だろうと自分に勇気付けた。
「ラッキ〜!!同じクラスじゃん!!」
海は女子のように飛び回って喜んだ。
「よっしゃ〜ラッキ〜」
心の底からの喜びはなかったけど海に合わせて喜びを見せた。
2年3組。夏海も同じクラスだった。
仲の良い男子を先に見つけるより、女子の名前を先に見た。
「・・・つまんねぇ〜の」
名前からしたらあんま目立たない女子ばっかり。
おとなしい女子ばかりだった。
これならクラスで『たらし』でいる意味がないかもしれない。
おとなしく純粋な女子までに手は出せない。
でも、俺ならできる。その自信がどこからか分からなかったけど出てきた。
だらだら教室まで歩いて入っていった。
机に座ってだらけていても変わらない。
気分を変えようと後ろの棚まで行きよりかかって海と世間話で盛り上がっていた。
すると、教室のドアがゴロゴロゆっくりドアが開く。
ドアの擬音語からして教室に入るのが嫌なやつだろうと察知した。
俺は気になって一部始終を見ることにした。
入ってきたのはいかにもおとなしそうな女の子。
しかも周りにおどおどしてる。
ドンッ。
少し様子がおかしくなった。
その女の子が叫ぶ前に掃除用具箱からモップが飛び出してきた。
一瞬のうちに、その女の子を大量のモップが囲んだ。
俺はおもしろくなってしまった。
思わず近づいてモップを片している女の子にこう言った。
「何してんの?」
女の子の顔はさっきよりも恐怖に満ちて泣きそうだった。
俺は少しあせったがそのまま女の子を見下ろした。
「わ――――――――ん!!」
やっと声をだしたかと思ったが急に立ち上がってまたドアに向かった。
が、
ガラガラガラ・・・・
ドアを開けた振動でまた掃除用具箱が開いてモップの大軍が襲ってきた。
俺は思わず噴出した。
「っもう!!モップのバカ!!」
彼女は1人そう叫ぶと教室を出た。
おっもしれぇ〜。このクラスで良かったかも!
「プッ・・・何あの子?おもしれぇ〜・・・てかかわいかったよな?啓」
海が入ってきて俺に問いかける。
「別に・・・興味ないし」
ない・・・ふり。第一印象じゃ決められねぇ〜し。
「まぁ〜た、そう言って、この『たらし』。お前が1番始めに目ぇ合ったじゃん」
海はにんまりこちらに笑いかける。
「だって、たまたま掃除用具箱の近くにいただけだって」
これは真実。別に興味があって近くにいたわけじゃない。
「あんなの・・・ただのお子ちゃまだろ・・・」
俺は海から真実を語りそうな目を隠すように黒い前髪を上げた。
ここからの話はほとんど啓の記憶になってきます。