第36話*狂い
「え?あたしが、海と?」
何で??いきなりそんなこと?
「海のこと、好きなんだろ?」
「えっ?!」
あたしは顔が赤くなったに違いない。
「!?」
啓があたしの反応を疑ったらしかった。
「やっ、ちが・・・」
「否定できないんじゃないの?」
「だからっ・・・」
「その・・・左手の薬指の指輪」
「・・・え?」
あたしはふいに自分の左手を見た。
「それ、海にもらったんだろ?“エンゲージリング”」
その言葉を聞いてあたしは分かった。
啓はあのとき思い出したわけじゃなかった。
きっと、勘違いしたんだ。あたしがこれを、海からもらったって。
ガタンッ。
啓は何も言わずに席を立ち、教室を出た。
休み時間が終わろうとするとき、教室に戻ってきて、黙って席に着いた。
後で・・・後で言わなきゃ。
『啓がくれたんだよ』って・・・・。
これ言って思い出してくれるとは思わない。
でも、本当のことだから。
言わなきゃ・・・。
『お昼の、放送の時間です』
給食の最中、昼の放送が鳴った。
『各クラス学級委員1名は、放課後、視聴覚室に集まって―――・・・』
各クラス1名なので啓に相談しようとした。
でも、朝にあんなことがあって気まずい。
「川崎くんあんまり記憶戻ってないみたいだし、神崎さん行ってくれる??」
先生の押し付け。
「・・・はい」
あたしは仕方なく引き受けた。
啓のほうをチラリと向いたが、一瞬目が合っただけでそらされた。
「っ・・・・・・」
絶対・・・言うんだ。
「うわーん!!こんなに遅くなるとは思わなかったー!!」
時間は6時半過ぎ。
部活終了時刻は終わっており教室はガラン。
「何でこんな遅くなるのよー!!絶対今日言うって決めたのにぃ・・・」
あたしはカバンに教科書を急いで詰め込んで啓がまだいるか探しに行こうとした。
ピタッ・・・。
教室を出ようとしたとき、話し声がした。
なんとなく雰囲気で邪魔しちゃ悪いなぁ・・・なんて思って覗いて見た。
「・・・・・・」
啓と夏海だった。
夏海の表情が明るい。
よく聞き取れなかったのであたしは耳をこらした。
「啓、あたしにキスぐらい、できるよね?」
啓は、表情を変えなかった。
誤解を解こうと決意したのに、狂ってしまった陸の決意。
夏海の突然の迫り。
啓はどのように対応するのか??
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