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第31話*忘れないで

教室まで全力疾走。


夏海と川崎がいる時点であたしの心は灰色に染まった。





川崎は今夏海の彼女だから・・・


川崎が決めたことだから・・・


“あいつ”が思い出してくれないから・・・





あたしの顔は机に沈んだ。


息切れと涙。


あたしの視界をぼやけさせた。






“あいつ”があたしを信じないなら・・・あたしには何もできない。


“あいつ”の記憶をよみがえらせることもできない・・・。





どうすればいいの?


“あいつ”は完全にあたしが“あいつ”のこと好きだだって忘れてる。


しかも夏海の彼氏。


あたしがもう1度告白しても、“あいつ”は夏海を信じて・・・。


あーもう考えたくない!


あんな事故さえなければ・・・川崎の記憶が無事だったら・・・。







今のあたしたちはどんなに変わっていたんだろう?






川崎がくれた“エンゲージリング”これの意味をしった時は1番悲しかった。


川崎が・・・“あいつ”が本当にそういう意味を知っていて“これ”をくれたのなら・・・。











でも、もう過去は戻ってこない。







現実を受け止めるしかない。





「川崎・・・」


あたしは顔を上げた。



「・・・北島??」


あたしの目の前の席に、北島が横向きで座っていた。


「・・・泣いてたの?」


あたしの目じりを見て言う。


「あぁ・・・あくびしてただけで・・・」


「無理すんなよ・・・」


北島の手があたしの頭をなでた。


触れた瞬間体がビクッと反応した。


「あ・・・ごめん。男嫌いまたか・・・」



体が受け付けないんだ・・・。



「ゴメン・・・ね?」




「あやまりたいのはこっちだよ」



「え?」



「啓のやつ、ただでさえ陸ちゃんのこと傷つけたのに、また・・・前よりもひどく・・・こんな形で傷つけるなんて・・・」


「北島・・・」


「いっそのこと陸も記憶失えば良かったのに・・・陸は記憶失っても、俺がいたのに・・・」


北島は顔をうつむかせていた。


「でも・・・川崎が決めたことだから」


「このままでホントにいいのか?」


「それは・・・」


「どうなんだよ?」


北島はいつもと違いけわしい表情だった。


「俺はこのままで終わりたくない。陸が今まで頑張ってきて啓をあんなに変えたのに・・・俺はこのままじゃやなんだ」


「・・・・・・」


「陸は・・・陸はどうしたいんだ?」


「あたしは・・・」


顔を上げた。


「川崎に、本当の記憶を思い出してほしい」


「その表情、いいじゃねぇか」


北島の童顔が輝いた笑顔になった。


北島が席を立ってあたしに言った。


「俺のこと、カイでいいから」


「あ、え・・・はい」


「あ、で、これだけは覚えといて」


「ん?」





「俺はそれでも、陸のこと好きだから」







海は、教室を出た。




『たらし』が言いそうに軽いせりふ。


あたしはぼうぜんとしていたが、やがて顔が熱くなるのが感じた。




北島じゃなくて海だっけ・・・が・・・あたしを?


本気??たらし??







一緒にいたぶんの嬉しさもあったけど、寂しさもあった。


海に告られても、あたしには川崎だけだから。


海のこと好きだけど、それよりも川崎のほうが好きだから。







よし、この気持ちを忘れずにいこう。




どんな壁があっても。





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