表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/57

第25話*聖なる日の悪事

翌日、ジャージを洗ってきれいにたたんで、学校へ行った。


くつ箱に時間通りに行くと、“あいつ”がいた。


「おはよ!これありがとね、返すよ!」


あたしは川崎の前に差し出した。


「お・・・おう」


川崎は目を合わせなかった。


恥ずかしいことしたのかな??顔が赤い川崎がかわいい。


あたしが笑ったら川崎は照れるのを止めた。


「な〜に笑ってんだよ?」


「別に〜」


こういう事が、延々続けてくれるだけで、あたしは幸せなのに―――。







とうとう早いものであたしの『勇気』から1ヶ月が経った。


3月14日。ホワイトデー。


バレンタインのお返しをする日。


でも、あたしには無縁なのかな??


川崎は普段通りだったし、何も言われてない。


携帯の新着メールもゼロ。


やっぱ忘れてるんだ・・・。


期待はそんななかったけど、ショックは大きかった。


なんだか、1ヶ月前を思い出したくなって、自然と体が役場前の公園へと向かった。


役場前の道路沿いを、とぼとぼ歩く。その時、携帯が鳴った。


メールかと思ったけど、それは電話だった。


主は、『川崎 啓』とあった。



「もしもし??」


『あ・・・もしもし・・・』


「え?どうしたの?」


『あ、いや・・・今さ、どこかいる?』


「え・・・役場前だけど・・・」


『役場前〜!?分かった、お前そっから動くなよ!すぐ行くから!』


ブッと電話は切られた。


待ってろと言ってもここは役場前。暇つぶしも何もない。


でも、『すぐ行くから』という川崎の言葉を信じてあたしはそこに突っ立っていた。


「ハァハァ・・・ゴメン。待ったろ?」


「え??いや・・・」


時計を見るとあれから15分が経っていた。


15分ならそれほどでもない。


「てか・・いきなりどうしたの?」


「あのさ・・・」


川崎の目が地面に落ちた。


エナメルバッグから小さなリボンのついた箱を取り出した。


「ゴメン、忘れてたんだ。コレ、あの時のお返し」


顔が赤い。でも、それをよそにあたしの目の前にそれを突き出してきた。


「え・・・?」


「分かんねぇのかよ!ホワイトデーだろ?今日」


戸惑っているあたしに川崎は恥ずかしそうに説明する。


「あっ・・・ありがとう」


あたしは涙が溢れて、止まらなかった。


「泣くなよ・・・中身、開けてみ?」


川崎の言うとおり、あたしはその箱を開けた。



「・・・指輪?」


そこには、ちいさな輪に、小さなリボンが付いてる・・・リング。


「結構高かったんだからな!大事にしろよ、『男嫌い』!!」


川崎の目はあたしをそらしていた。


それでもあたしは嬉しさで涙がまた溢れてきた。


何も言えない。この指輪に意味がなくても嬉しい。


それだけで・・・思いが溢れてくる・・・。


「それでさ・・・俺さ・・・」


川崎は横目で頭の後ろをかく。


「あ、その前に・・・その指輪、俺が付けてやるから・・・」


「え・・・いいよ!自分ではめられるし!」


川崎の肩はガクッと下がった。


あたしは川崎の言葉からしてバカにされてるのかと思った。


でも―――・・・


「俺がはめたいんだ」


川崎はハッキリと言い切った。


あたしが持っている箱の中から太陽で銀色に光る指輪。


それを、川崎は震える手で取った。


そして、あいている左手で、あたしの左手を上げ、支えた。


「お前、左の薬指につける指輪のコト、どういう意味か知ってるか??」


「え・・・??」


正直、知らなかった。


指輪はあたしならどこでも付けても同じと思っていた。


「あのな・・・エンゲージリングっていうんだよ・・・」


そう言って、震えていた右手で指輪をはめようとした。


が、




カチャンッ。



指輪が地面に落ちて、そのまま縦に転がっていった。


「あ、やべ・・・。買ったばっかなのにっ・・・」


川崎は急いで指輪を追っかけた。


でも、指輪はなめらかな動きで川崎との距離を縮めてくれない。


指輪の逃げ道の先は・・・役場前の道路だった。


そうとも気づかず、川崎は下を見て指輪を追いかけるだけ。


このまま行ってしまったら、車に突っ込んでしまう。


とうとう指輪が道路に出た。


川崎は全く気づかず追いかける。


そして、やっと指輪をつかんだ。


「よっしゃ、良かった・・・」


あたしはその時やっと声を出した。








「―――――――――川崎!!ダメ!!!」








「えっ・・・・・・―――――!!」










川崎は、ゆるやかな弧を描いて飛ばされた。


血が、急な弧を描いた。


あたしはそれを、見つめているしかなかった。


血の中で倒れている、川崎を。




啓の想いがこもった『エンゲージリング』を追いかけたはずみで、啓は事故に・・・。


果たしてこの後陸はどうなるでしょう・・・。


これからも読んでくださったらうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ