第22話*勇気を出して
私服オッケイ、髪型オッケイ、持ち物オッケイ、・・・渡すもの、オッケイ・・・。
待ち合わせ時間まであと1時間。
待てずに待ちくたびれたけど1時間以上前からあたしはココ、役場前公園にいる。
グラウンドの周りをうろうろしたり、落ち着こうとベンチに座るけど体が浮く。
トイレの鏡で繰り返し自分の容姿をチェックする。
「・・・怖いなぁ・・・」
あたしの勇気は時間が近づくにつれて小さくなってきた。
何て言って渡せばよいか
受け取ってもらえるのだろうか・・・。
自分でもこれは『マズイ』とも思えた、渡す物。
「帰りたいな・・・」
あたしはボソリと呟いた。
「・・・神埼?」
「!!?」
あたしはその言葉だけに驚いてベンチから勢いよく立ち上がった。
「ぇと・・・待たせた?」
走ってきたかのような荒い声。
時計に目をやるといつの間に5時をもう回っていた。
「ゃ・・・全然、あたしもさっき来たし」
精一杯の笑顔を作り、川崎に送る。
「で、用件は??」
さっそく本題に入った。
あたしのバッグの中に、『それ』はある。
でも、取り出すのに時間がかかり、言葉のタイミングがつかめなかった。
「ぁ・・・ぁの・・・」
小さな震えた声しか出ない。
このまままた逃げるつもり??
自分から前に進まないつもり??
そんなの・・・嫌だから。
「コレ・・・作ったんだけど・・・」
あたしは自分の目の前に持つ。
「・・・もらっていいの?」
川崎の冷静な声。
「・・・うん」
言ってよかったという思いから、あたしの声のトーンは高くなった。
「ありがと・・・」
呟くように言うが、声のトーンからして優しい声。
『ソレ』を受け取ると、自転車にまたがった。
「お、マフィンじゃんね。じゃあ食べたら感想いうから♪」
「う・・・うん!」
「・・・じゃあな」
「・・・ばいばい」
川崎は、去った。
それと同時に、あたしにはほんのチョット、達成感が湧き出てきた。
渡せた・・・。あんなに『男嫌い』ひどくなったのに・・・渡せた。
良かった・・・受け取ってもらえてよかった。自分から声出してよかった・・・。
あたし、お疲れ様。
陸がやっとの勇気で渡せせた『マフィン』
川崎は喜んでる??
陸に贈るその感想とは何でしょう・・・??
これからも応援よろしくお願いします




