第17話*元カノのコト
あたしの『男嫌い』は半端じゃなかった。
川崎以外の男子にも体が受け付けない。
顔を見るだけでも、目が合っただけでも、鳥肌が立ち、涙が出る。
仲が良かった北島でも、ほかの男子と同じ。
やだよ・・・。こんなあたしやだよ・・・。
放課後、あたしは屋上にのぼり空を眺めていた。
あたしはもう放心状態。何言っても無駄。
そよそよ吹く風だけが、あたしに抵抗する。
「陸」
声の主は真奈美だった。
「・・・何?」
あたしは体のどこも動かさず、声だけで反応した。
「啓のことで、話そうと思うんだけど」
真奈美の言葉と重なって、あたしの体はビクッと動いた。
「啓の断った事情も・・・聞いてほしいんだ」
正直言って聞きたくない。でも、聞かなければならないんだろう。
「分かった・・・話して」
そう言うと真奈美はあたしの隣に立って、空を見上げた。
「あいつには・・・中1の時は彼女がいたんだ」
傷つく話題から切り出してくる真奈美。
「その子、啓から告白されてね・・・。あたしは最初啓が遊びのつもりだと思ってたんだ。でも、逆だったんだね・・・」
「え・・・?」
逆??どういうこと?
「啓・・・本気で惚れてたんだ。でも、その相手が遊びだったみたい。付き合いは長かったんだけど別れを告げられて・・・啓、かなりショックだったらしいよ」
「それからもっとひどくなったんだ。啓の『たらし』癖は」
ひどくなったと聞いた瞬間、その元カノにあたしは恨みを感じた。
「そこらへんに女子がいると輪の中に入って会話し始めるし・・・女子にはみんな、よりかかっていくようになったんだ・・・」
「え・・・」
でも2年生になったらそこまで『たらし』はなかったような・・・。
「でもね、2年になったら何故かやわらいだ。構う女子も少なくなってたような・・・」
それって・・・あたしに構ってたから??
「てか、1番聞きたいことがあるでしょ、陸」
真奈美は真剣なまなざしで見つめてきた。
あたしは一瞬何のことか分からなかった。
でも、すぐに分かった。
「・・・その元カノの、名前・・・知りたい・・・」
あたしは『勇気』というものを振り絞った。
「それはね・・・・」
真奈美の眉はハの字に曲がった。
「陸の近くにいるよ」
あたしの近く??真奈美しかいないじゃん。
「違う!そういう意味じゃなくて、存在がよ」
「え??」
存在って、それも真奈美しか・・・、!!
真奈美もあたしの反応に気づいたみたい。
そして、ゆっくり口を開いた。
「夏海だよ」
夏海とはどういう意味??
対照的なあの2人が付き合ってたの!?
夏海が川崎の恋の遊び人だったの・・・??
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