第14話*陸の失った心
黒に染まったつんつんの髪の毛。
ホックはいつも開けていた。
最初に出会った時にはだるそうに見下ろす目。
『たらし』の有名さは大きかった。
学級委員に何故か立候補してきてしまいにはあたしにチュ―・・・。
『男嫌い』には耐えられない感触が、頬に残った。
あたしが倒れたときには、保健室まで運んでくれた。
『たらし』の規則か知らないけど、優しい言葉をかけてくれた。
メールした時にはあいからわず気があるよ〜な文送ってきたり・・・。
体育大会の時なんて、クラスのことひっぱって優勝までできた。
夏休みには部活の練習すっごいがんばってて、『たらし』の余裕もなかったみたい。
汗を流して笑ってた姿、カッコ良かったな・・・。
あいつがボールを床につく姿、輝いてた。
あたしが試合って言った時には、『頑張れ、応援してやっから』と言ってくれた。
言葉では言えなかったから、あたしは“あいつ”の試合のときはメールで送った。
『頑張ってね』・・・と。
合唱コンクールでは練習ではぜんぜん出さなかったくせに本番では1番声出てたよね。
“あいつ”のおかげなのかなぁ・・・金賞得れちゃったね。
修学旅行でもいろいろあったし・・・本当に楽しい時間だったよ。
このまま時間が止まればいい、もう少し、川崎との時間を増やして・・・。
――――――でも、今はそれを一瞬ですべて失くしてしまった。
『俺はお前と付き合うのは不安だ』
『不安』って・・・それが川崎の気持ちなの??
どういう意味なの??
1月1日午後6時48分
プルルルルルルルル――――――――
あたしの部屋にあった子機の電話が鳴った。
「――――もしもし」
取ってみると声の主は真奈美だった。
真奈美は今まで“あいつ”のことでいろいろ協力してくれた。
でも、もうそんな必要はないかもしれない。
「啓から聞いたよ・・・。告ったんだってね。メールで来たんだ」
真奈美の静かな声。
あたしは小さく「うん」と答える。
「啓ね・・・一昨日は陸が好きな人教えてやるって言ったからすごい楽しみにしてたんだよ。『男嫌い』のあいつが人を好きになるってどういう奴なんだろうって。もしかして、俺かも!?とかふざけて答えてたけど・・・本人はそれが当たるとは思わなかったんだって」
「ふーん・・・」
もう・・・“あいつ”の話はしたくない・・・。
思い出したくない、振られたこと。
「でも啓を悪く思わないで・・・あ、別にかばうつもりじゃないんだよ、“あいつ”、言ってたんだ・・・・・・」
『俺はあいつの言葉を受け止めて付き合ったとしても、告白を断るよりもあいつを傷つけてしまうかもしれない』
・・・・・・え?
「それどういう意味?って聞いたら、答えてくれなかった・・・。多分、元カノのことがあるからだと思うけど・・・」
元カノ??
「元カノと前いろいろあったらしいんだ。啓は、それを怖がってるんじゃないかな・・・?」
頭はもう、限界だった――――――――――――。
物語の起承転結、『承』に入りました。
陸の失ってしまった心はどうなるんでしょうか。
川崎と元カノとの間に何があったのでしょうか。
それが、『承』でのポイントです。
ご評価、よろしくお願いします。