第13話*陸が泣いた日
『さぁ〜教えてもらおうか??』
午後8時38分、川崎からのメールが来た。
冬休みだから川崎に会えないものの、メールがほとんどだから寂しくない。
会えない寂しさを忘れてしまった。
『さぁ〜何のことかな?』
とあたしがとぼけたから、
『最低〜』
と送り返してくるのがおもしろかった。
『ちゃんと覚えてるから・・・』
『誰!?』
『まだ言わな〜い♪』
『じゃ〜今年中に言えよぉ!』
『忘れてるかも』
『俺が言うけん!』
今日はいよいよ大晦日。お母さんは買出しから大忙しで疲れていた。
年越し蕎麦をあたしの目の前におくと、手を合わせて一人で勝手に食べていた。
「メールばっかしてないでぇ、今年を精一杯すごしなさいよぉ」
と言い、お母さんはまた麺をすする。
ふと気がつくと11時30分!やばい、もうそろそろ言わんばかも・・・。
『好きな人がいるなら頑張れよ』
これが川崎とのさっきのメール内容。
あたしは打ち始めた。あたしの『スキ』という気持ちを・・・。
でもなんて伝えたらいいの??『スキ』なんて直球に言えない・・・。
『好きな人に頑張れって言われても頑張れんし・・・』
あたしは目を痛くなるほど閉じて送信ボタンを押した。
まだキャンセルボタンは押せるよ・・・まだ・・・まだ・・・。
“送信完了しました”
これが表示されたとたん、あたしの上がっていた肩は下がった。
川崎の返事は遅かった。
もうすぐで、年が明けるのに・・・。
♪〜♪〜♪〜
着信音が鳴った瞬間、あたしは携帯に飛び出した。
『は?』
時間をかけて返してきた言葉が・・・・『は?』??
『分かってよ・・・』
だんだんと、川崎の返事が遅くなることが予想できた。
5分で返ってきた短い返事。これ以上長い分はないかもしれない。
『分かるよ』
分かるの・・・?あたしが『スキ』って、分かってくれたの??
『良かった』
あたしは安心した。でも、不安が残っていた。川崎の気持ち、聞いてない。
『ありがとう。嬉しいよ。でも・・・』
え・・・でも??
『俺はお前と付き合うのは不安だ』
目の前には黒い雲が広がったようだった。
『不安』は、いい意味ではない。
『安心』のほうがずっといい。
どういう意味なの川崎――――――!!
あたしの目の前のテレビでは、すでに来年までのカウントダウンが始まっていた。
5・・・3・2・1――――――――HAPPY NEW YEAR。。。
あたしにとって去年は、幸せな年にできなかった・・・??今でも、そうなの??
目から何かが出てきた。
水・・・??いや、涙か・・・。
久しぶり泣いた。『男嫌い』の症状以外で。
泣きじゃくった。振られた、という意味で。
そのあとは、メールの返事は・・・送れなかった。
起承転結、『起』が終了いたしました。
陸の告白はあいまいなものでした。川崎の返事の意味も分かりません。
いずれこの物語を読んでいただけたら、解かると思います。
ご評価よろしくお願いします。