第11話*『スキ』を知った
「恋だねそれは」
図書室で勉強してたつもりが、真奈美の言葉によってラブトークへと変わる。
「やっだぁ〜何ぃ?恋って、誰に??」
あたしは笑いながらシャーペンの先っちょを真奈美に向けた。
「さぁ・・・その様子じゃ啓じゃないの?」
真奈美はしらっと答える。
「え?啓って川崎!?てか『じゃないの』って真奈美自分のことでしょ〜??」
「あたしはあいつなんか嫌いだよ。あんただよ、陸」
今度は真奈美が分厚い本の角であたしを指してきた。
「は?」
あたしは混乱状態。
「あんたが“あいつ”のこと好きじゃないの?って言ってんの!」
真奈美はほんの角で机をたたいた。
「っは、あたしが?!『男嫌い』の・・・あたしが??」
あたしは眉をゆがめながら笑った。
「じゃ〜ぁ何なのよ!そのノートは!!」
真奈美はあたしが目の前に広げていたノートをびしっと指差した。
「何よノートって・・・・!!」
あまりのすごさに驚いた。
線ばかりの大学ノートにかわいらしくハートのマークがたくさん書かれていた。
「うわっ!何このノート!?気持ち悪っ!!」
あたしはノートを手で払った。
「その気持ち悪いノートを作ったのはお前だろーが!意識もうろうに書いてたんでしょ!頭の中のことそのまんま書いてんだよ!」
え・・・?あたしの頭の中ぁ?
「あんたが好きになるとしたら、おそばにいる学級委員の川崎刑、じゃなくて啓しかいないでしょ!!」
真奈美のとどめの一発。
「え、でも・・・あいつのことなんて全く知らないし、好きになったとしてもどこを好きになったか・・・・・・」
「チッチッチ」
真奈美は舌打ちをしながら人差し指を立てて左右に振った。
「陸・・・あんたには人を好きになる理由なんて知らなくていいんだよ。そのうっとおしい『男嫌い』が治ってくれたら」
両手をあたしの肩に置いて顔を近づけてくるだけで怖い。しかも笑顔なのでなおさら。
――――――人を好きになる理由なんていらない。
あたしにはもっときっかけとかあって好きになるって思ってたけどな。
あたし、本当に“あいつ”のこと好きなのかな?
――――――でも、嫌いじゃない。
教室に戻るとグラウンドでサッカーを終えてきた川崎たちがいた。
川崎と目が合うとすぐにそらす。
『スキ』を知ってからなんかあたしぎこちない。
「おい」
川崎の呼ぶ声。
あたしはさっと振り返った。
でも・・・
目が合わせられなかった。
「・・・神崎?どうした?」
昨日と今のあたしの反応の違いに川崎は気づいた。
「ぇ・・・『男嫌い』、復活??」
あたしは何も答えない。
「まぁ・・・治ってたわけじゃねぇけどな・・・」
川崎は肩を落とす。
―――違うの。
「まぁ時間はまだまだあるさ」
―――今のは『男嫌い』じゃないの・・・。
「そうだ、今日の専評会だけどさ―――――」
――――――顔が熱いよ、胸が苦しいよ。
――――――『スキ』ってこんなに苦しいことなの?
――――――『愛しい』ことなの??
初めて人に『スキ』を知った。
しかも、こんな『たらし』に。
何が『スキ』なのか分からない。でも、なってしまった。
―――――川崎が・・・好きです。