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エピローグ
春の光が、部室の床に長く伸びていた。
窓を開けると、校庭から運動部の声が流れ込んでくる。遠くで誰かがピアノを弾いている。あらゆる音が混ざり合い、放課後という名の不協和音を奏でていた。
その中に、見慣れない顔が二つあった。
入学して間もない一年生だろう。二人は並んで、少しだけ緊張した様子で立っている。片方は女子生徒で、もう片方は眼鏡をかけた男子だった。二人とも、教室の中を物珍しそうに見回している。
相沢さんが椅子を引いた。小山田くんが「どうぞ」と手を差し出した。
俺は一歩前に出た。
「ようこそ、青春研究部へ」
二人が俺を見た。
女子生徒の方が、おそるおそる口を開いた。
「あの……青春の研究って、具体的に何をするんですか」
俺は少し考えた。
本当に少しだけ。
「屋上でパンを食べたり、ホースで濡れたり、京都に行ったりします」
二人が顔を見合わせた。眼鏡の男子が、恐る恐る聞いた。
「……意味あるんですか?」
俺は即答した。
「あると思います。たぶん」
部室に、短い沈黙が落ちた。
窓の外で、風が鳴った。校庭の声が、また遠くなる。
それで十分だった。
幕は、上がったままだ。




