奈巳邇灰狼
この度遊びに来てくれましてありがとうございます
少しのでも楽しんで頂ければ幸いです
「冥利研修お疲れ様。でも大変だったみたいだな」
クラスメイト且つルームメイトの風百合充希が向かいに座りカレーを頬張る自分に話かける。只今、学園の食堂で昼食中であり、なかなか混みようだ。時間帯というのもあるのだが、一般信者などにも開放している事もあり、学生以外の姿も多く見受けられる。そんな少々賑やかな食堂で昨日の話をしている所だ。自分は口の中の物を飲み込み息を大きく吐き一呼吸置く。
「労いの言葉が沁みるよ。ありがとな充希。にしても流石に疲れた…… っていうか今思えばよく生きてたなって」
「本当だぞ!! 学園でも昨日の今日なのに噂になっているしな。で隊の人は、大怪我って聞いたけど」
「ああ。命に別状ないみたい。でも一人隊の人が結構酷い怪我で数ヶ月完治にはかかるんじゃないかなって」
「そっか。早く復帰できると良いな」
「ああ。また後日お見舞い行けたらと思ってる。まあ出来たらだけど。お世話になったから」
「そうだな」
「にしても充希。お前の時もあんなに大変だったの研修?」
「うーん。数匹は殲滅したけど今回みたいな異形態ではなかったし」
「異形態か…… うんーそうなのかちょっとわからないけど、讖が背中にあったみたいで、諸々の戦闘の流れで見つけずらくなっていたっていうのが実際の話だと思う」
少し考える素振りをみせる彼に充希が顔を寄せてきた。冥利もそれに同調するよに顔を寄せる。
「それに、今回灰狼に遭ったとか聞いたぞ」
「灰狼?」
「『同僚殺し』こと奈巳邇灰狼」
「はあ? 何その『同僚殺し』って。確かに見た目からして怪しいし火器も所持した上にピエロ見ても動じないっていうか…… 兎に角普通じゃないオーラはあったけどそんな異名付けられるよな感じじゃなかったぞ。現に俺等その人に助けて貰ったようなもんだし」
「今回はな。でももっぱら隊の中では有名な人物だぞ」
話の合間に口にしていたカレーも終わりトレーを片づけ席を立つ自分に続き、充希も一緒に腰を上げると、食堂入り口で彼を待つこと刹那、早歩きで彼と合流すると並びで歩き、さっきの話の続きと前置きした充希が口を開いた。
「俺も研修の時にちょっとだけ聞いた話だと隊員を手にかけたとか。しかも自分と同じスリースターの同期みたいだぞ」
「それって隊規定で禁止されてないか?」
「そうだろ? で、半年停職になったらしいんだが、その後ぱったり連絡とれなくなったとか言ってたかな。隊でも実際探しているらしい」
「どうして探してるんだ?」
「実力は隊長クラスらしいしから人材的も必要なのかもしれないけど、一番は火器を所持したままってことらしい」
「ああ。確かに持ってた」
「だろ。あれ普通に弾丸入れると人も殺傷出来る代物だからな。俺等は聖令隊ってことで特例で所持出来るだけだからさ」
「まあ。確かに」
「でも見つけた所で隊に復帰させるつもりならちょっと怖い気がするけど」
「どうして? あの人強いから戦力になるじゃん」
「でも一緒に仕事して命任せられるか? っていうかその前に相手組む人出てくるかが問題だよな」
神妙な面もちの充希の横で老若男女問わず声をかけられ手を振る自分に気づく。
「冥利。俺の話聞いてたか?」
「うん?」
彼の問いと同時に子供の声で自分の名を呼ぶ声が耳に届く。
「冥利兄ちゃんバイバイ」
小さい子供がハイタッチの様相を見せ、それに答えるかのように軽くタッチを交わす。
「お母さんによろしく」
「判ったーー」
元気な声を上げ満面の笑みを見せる子供に手を振る友人の姿を見て、やれやれといった表情を浮かべる。
「相変わらず信者からの人気は凄いな」
「そうか? 俺よりも親父の方が凄いけどな」
「あの方は別格だろ。上様は導人様の中でもトップの人気だろう。俺だって尊敬しているよ」
「親父そんな話聞いたら大喜びだな」
笑みを讃えながら答えると、彼は天を仰ぎ遠い目をした。
「こんな世界で生きづらい人なんて五万といるだろ。そんな中で、導人様の次に権威がある聖令隊として勤める事ができる。そんな高い位の職務に就く以上他の信者を守り導く事が俺の役目で、それに人生を全うするって決めてるんだ」
「充希本当信仰心熱いもんな。でもまずは幸先良い一歩踏み出せそうじゃん聖令隊入隊は確実だし」
「ああ」
「頑張れよ」
「ありがとう。冥利も研修色々あったけど諦めないんだろ?」
「とりあえずな。俺は充希みたいな信仰心熱くなはないけど、自分にしか出来ない事だろうし、それに」
言葉と共に辺りを見回しながら、笑みを浮かべるた。
「皆がこんなご時世で大変だけど少しでも笑って生活出来れば良いかなって。さっきの子供みないにね」
「冥利らしいな」
「そうか?」
「お前は人たらしだから」
「それ誉めてる? 貶してるどっち?」
「どっちも。でも人良すぎだと色々巻き込まれそうだから、自分の意志だけは曲げんなよ」
「ありがとう。肝に銘じとくよ」
互いの顔を見合わせ笑みを称えた所で、充希の腕時計が振動すると、時計を見ることなく機能を止めた。
「充希用事あった?」
「いや、タイマーだし大丈夫。なんか明日、聖令隊の仕事に同行することになってそのミーティングがあるんだ」
「今回で二回目だよな。すげーじゃん」
「そうでもないぞ。俺も研修行った後に色々聞いたけど、よくある事らしいし。卒業して直ぐに戦力にしたいみたいだな。なんせピエロ殲滅出来る人材が極端に少ないし、先日みたいに負傷者は出るだろうからその穴を埋めないと回っていかないんだろう」
「成る程。昨日の今日で説得感が増すな」
「まあ。そんな所だから、俺行くわ。冥利は」
「今日から明日まで休み」
「じゃあゆっくり休めよ」
軽く充希は自分の肩を一回軽く叩くと軽快に走り出す中、数メートル先を行く彼の名を呼ぶ。
「充希。気を付けて行ってこいよ」
掛けた声と共に大きく手を振って見せると、彼も手を振って返し、すぐさま目的へと向かい走っていく。その背中を自分は物羨ましく思いながら見つめていた。
あの後自分が思っていた以上に心身共に疲労していたらしく、今朝までぐっすり寝入ってしまった。おかげで今はだいぶ体力も戻り、めったに味わえない平日の街を散策しつつ、先日負傷した関のお見舞いの際の手みやげを物色していた。流石に一日お世話になった程度なので趣味趣向が判らず、何を持参して良いものやら皆目検討がつかない。第一、お見舞い自体許可がおりるのかも不明。ただやはりあの状況化にいた手前、何かお礼をしたいという気持ちが強いのだ。お陰で店を見ては出るを繰り返している。そんな事を小一時間しているうちに疲れ果て、歩行者が闊歩している姿が見えるカフェで、腰を据えて喉を潤していた。
「はぁあ。どうしよう……」
日頃からウインドウショッピングというものに無縁ということもあり、思わず弱音をこぼす中、不意に昨日の出来事が脳裏を掠めた。今はこんな呑気にしているが、もし自分に組む相手が見つかり、充希のように聖令隊に入隊できたのならきっとあんな惨劇は日常になるのかもしれない。こんなゆったりとした時間も、もしかしたらない可能性も怏々としてあるだろう。そう思うとこの時間は貴重だ。
(まだ時間はある。もうちょっと座ってよう)
再度飲み物を口に含ませた矢先、外を行き交う人々が様子がおかしい。腕時計に搭載されている検索機能で調べると、この近くでピエロが出現したらしいのだ。また、そこには既に聖令隊が派遣されているともあった。ひとまず胸をなで下ろすも、昨日の話から充希が召集されていた件を思いだし、腰を上げ店を出た。
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1月4日20時30分以降投稿
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