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いざ、研修!!

この度遊びに来てくれましてありがとうございます


少しのでも楽しんで頂ければ幸いです


「陽谷君。何そんな怖い顔してるの?」


 長めの前髪を髪バンドで留めた関がアイラインで線を描いたよう細い目でこちらに視線を送ると、飄々とした表情を浮かべつつ、自分の目の前に紙コップを差し出す。


「まあわからん訳でもないけど、本番で動けませんじゃあ大変だぞ。最低限自分の身は自分で守る。これ鉄則」

「はい。すいません」

「関。あまりうちの後輩を怖がらせないでくれ」

「えーー 俺そんなつもりなかったんだけど」

「あ、あのーー 鯨崎さん自分は気にしてないんで。返ってお二人に気を遣わせてしまったみたいですいません」


 角刈りを少し長めにカットされた髪に凛々しい眉毛が印象的なソース顔の鯨崎が、フォローに入ってくれた事に感謝し、関から渡されたコップを手に取ると口を潤す。自分も自覚はしていたが、緊張のあまり表情が強張り口内が乾く。なので実際の所、体が水を欲していたのは明白であり、非常にありがたい。

 辞令が出て翌日の朝から聖令隊本部に入って19時間を過ぎようとしていた。

 今回お世話になっている関東第五部隊、関、鯨崎組は結成4年を経過しているまだ若い組ではあるが、関東支部五部隊ある中、殲滅率が上位の組みなのだ。なので五部隊でも期待のホープという立場の二人なのである。そんな彼等に今回お世話になっているということも要因だが、一番は自分の目標としていた聖令隊本部に足を踏み入れている現状に心身ともに追いつけておらず、研修に入ってからずっと全てにおいてぎこちないのだ。


(関さんの言う通り。後少しだけど身が持たないかも)

 

 意識して緊張を解すべく、ざっと周りを見渡す。今の時間は3列に並ぶ机の列には自分達以外誰も座っていない。基本常に5組が待機。今は、1組が仮眠、3組が見回りと、ピエロ殲滅出動と外に出ている状況であり、室内は自分達しか居なかった。また鯨崎の話だと、今回は珍しくピエロとの戦闘がないと仮眠前に言っていた。実はその話を聞いて安堵している自分がいる。学園でも対ピエロ対策をさんざんしてきてはいるものの、実際に出くわした事がなく、やはり怖いという気持ちを拭うことはできない。

 一回経験していれば気持ちに余裕がでるのかわからないにせよ、やはり今まで未経験というのは、どうにもこうにも落ち着かず、無意識に鯨崎の机の上の時計に目が行く。すると、背後から関が自分の肩を軽く叩きながら、顔を寄せる。


「時間気になる? このまま何も無く終わって欲しいよねーー」

「えっ? いや自分はそんなつもりは」

「おいおい関ーー」


 完全に気持ちを読まれ慌てて否定する自分のフォローに入る鯨崎が苦笑いを浮かべた直後、サイレンの音が室内中に響き、全ての卓上の空中ディスプレイが作動したかと思うと赤地に白字が現れた。『ピエロ出現。至急現場』ディスプレイの文字を凝視すると当時に一回唾を飲みむも、二人は椅子にかけていたジャケットを手にし走り出してた。


「二人共、いくぞ!!」


「は、はい」


 慌てて二人の後を追い黒塗りの車に乗り込み、車は猛スピードで車庫から出ると白色回転灯が回り車のボディに反射されながら暗がりの街並に繰り出す。車両のバックドアガラスには『ピエロ出現。移動中。ご協力をお願い致します』という液晶掲示され、専用車両は申スピードで4車線の道を走り抜ける。後部座席に乗り込んだ自分は車内前方に視線を送るとフロントガラスの約半分に大量の情報が写し出されている状況に目を見開く。二人はその情報を目にしながら作戦を練っているようだ。が、多少の緊張感は感じられるものの、バックミラー越しから見える運転席側の鯨崎からどことなく余裕のある表情が垣間見えた。その時不意にミラー越しの彼と目が会う。


「大丈夫か?」

「は、はい」

「顔さっきより強ばってるぞーー」

「それはしょうがないだろう。初めての実戦なんだからな」

「まあ、そうだけどね。そうそう。とりあえず学園でも習ってた事もあるけど、俺等が昼間言ってた事覚えてる?」

「はい。ピエロを殲滅させるには胸にある緑の塊の核を破壊する事であり、鯨崎さんが前衛で陽刀によるピエロの核を破壊。関さんは火器による後方支援をしながら核の在処と、もし可能なら破壊を行う。ですよね」

「模範みたいな回答だが正解。まあでも実際は現場の状況で変わるから、臨機応変に対応っていうんのが実際の所かな」

「関の言う通り。現場によって対応は様々だからな。

核の在処もみな違う。色は決まって目の色と同色の緑なのだが、まず外見からではわからない。なので、ピエロの体を砕いて核を目視するか、彼等も興奮すると核が仄かに光が増す。それを見つけて、その箇所を射抜くかだ」

「で陽谷は今回は擬刀だから俺と同じ後方だな。とりあえず近くより連携は離れてみた方がわかりやすい」

「はい。わかりました」


 緊張感を帯びた返事をし、生唾を飲み込む自分を乗せた車が、猛スピードで爆走する。車窓から写る景色の流れからして制限速度ギリギリと言った感じだろう。そんな車道は未明と言う事もあり往来する車もいつもより遥かに少ない中を走りぬけ、ものの5分程でピエロの出現したという公園に着いた。

 高層ビルの立ち並ぶ中の一角にある木々の茂る芝公園である。ここは都内でも1、2位を誇る広さの公園であり、昼間はビルの利用者は勿論ここに遊びに来る家族も多く、人々の憩いの場所と言ってもおかしくない場所だ。そんな所にピエロが入り込んでしまった以上確実に殲滅させなくてはならない。

 自分達は車から下りると、車の後方に移動しトランクを開けた。するとそこには漆黒の箱のような物がトランクと寸分違わない大きさではめ込まれた状態になっていた。彼等は軽くそれに手を翳すと空中ディスプレイが機動。指紋認証と顔認証を素早く済ませると同時に解錠した音が耳に届き蓋が大きく開いた。そこには黒ボディーに青い線が銃口に沿って入ったハンドガンと、ライフル各一丁と銀色の弾丸。並びにグリップのにぎりやすそうな棒のような物が納められている。二人はそれを各々持つ。


「さーてちゃっちゃっと終わらせよっか。ほら行くよ陽谷。俺の背後に居な」

「はい」

「では行こう」


 鯨崎の声と共に街頭のある園内の道を歩き始める。辺りを見回せば街頭のある所以外は木々の葉が風で揺れ音が聞こえるぐらいで何も見えない。


「奥の方何も、見えないですね……」

「そうだな。でもそれが好都合なんだ。彼等の緑の眼孔が際だつから返って町中の方が大変だったりする」

「成る程。そうですね。うんーー でもこの広い公園内でどうやって見つけるんですか? 街中や公園出入り口なんかはカメラとか設置されてますけど木々とかにはないですよね」

「そりゃあこれからわかる。とりあえずどうする、この辺りで俺等居て良い? 鯨崎」

「そうだなこの辺りでいいだろう」


 道を少し逸れ木々の茂る場所へと移動すると二人を残し鯨崎が腰に携えた棒を握ぎり先を引っ張る。すると30センチ程それが延ばすと一人木立の中に入って行く。


「あんなに延びるんですね」

「警棒みたいな感じだけどな。さてとこっからだぞ。まずはこの木の中腹まで登る。行けるよな」


 頷く自分をほぼ見ないうちに素早く登って行ってしまった。明らかに遅れを取った形となってしまった自分もすぐさま木によじ登り、彼の目線へまで辿り着く。すると眼下には先程鯨崎と別れた付近が眼下に広がる。そんな中、関が指を指した。


「あの辺見てて」

 

 彼の指の先を追い視線を送るもただ暗いだけで何も見えず、困惑する中、その状況に気づいた関はしまったという表情を浮かべる。


「すまん。俺視力すげー良かったんだわ。特化ってやつね。後は場数こなせば気配も判るようにはなるんだけど普通は見えんわな。ちなみに鯨崎の特化は『強力』っていって腕っ節強いの。でとりあえずもう暫くあの辺見てて」


 関の言われるがまま、先示した方を見ていると、オレンジ色の光が木々の間から漏れ始めた事に気づき関の方へと視線を送る。


「陽刀発動させたみたいだな」

「発動ですか?」

「ああ。発動させると結構めだつだろ。夜だと特に目立つよねーー で、さっきの質問。ピエロの探し方だけど、あれ発動すると勝手に集まってきちゃうんだよね」

「勝手に? ですか」

「うん、そう。勝手に。理由は定かではないけど、陽刀のあの光がお好みらしくてね。こっちから探さなくても勝手に着てくれるわけ。あまでも刀もその人に合わせてカスタマイズしてるから、本人以外持った所でああならいようになってるけど」

「へえーー そんな習性と仕組みあるんですね」


 関心した素振りした直後関の顔つきが一瞬して引きしまり、静かにというジェスチャーを見せたのだ。慌てて口を噤み光の方へお視線を送る。数分の静寂直後、光が動き木立が激しく一瞬揺れた。何が起きたのか全く判らない自分は様子を伺うように関の方に視線を送ると、瞬きもせずずっとその箇所を見つめていた。その状態が暫し続いた後、凝視し続けていた関が一回大きく息を吐く。


「よし、とりあえず鯨崎の所まで行こうか」


 一瞬にして先までの緊迫した表情はなくなり、今までの雰囲気に戻った彼はひょいっと飛び降りる。それに続くように自分も木から飛び降り、木立の中を歩いていくと、陽刀を持って佇む鯨崎の背中が見えた。


「お疲れっ。相変わらず手際良いよな。急所ズドンだし。俺の見せ場なく終わっちゃったのが悲しいけど」

「ははは。また今度頼む」


 にこやかに笑いながら、自分等の方に向く鯨崎が一瞬にして表情が固まる。それと同時に関は拳銃を抜いた。二人の急展開の行動に驚くのもつかの間、暗闇の木立から不気味な笑い声がしたかと思うと、ピエロが自分等に向かい飛びかかってきたのだ。陽刀ですぐさま伸ばした手を切り落とし、距離を取ろうと後退しようとした鯨崎よりも先に腕を捕まれ数メートル先の木の根本まで吹っ飛ぶ。


「鯨崎!!」

「鯨崎さん!!」


 彼の名前を呼ぶもピクリともしない中、ピエロはすぐさま自分等にターゲットを替えるとこちらに激走する。尽かさず関が一発それの片足を蹴散らすと、歩行不可能でピエロが倒れ込む。その隙とばかりに、自分の襟刳りを掴んだ。


「鯨崎の陽刀を取ってあの目の前の木に刺せ!! 本人が使用してなくても少しの間なら光はそのままだから、奴をここに止められる。お前はその間にここから離れろ!!」

「俺も戦いま!!」

「お前じゃ足手纏いなんだよ!! 良いからさっさと命令聞け!!」


 怒号の声と共に走急いで駆け寄った鯨崎は息があるものの、意識がまだ戻っていない。そんな矢先、関の叫び声が耳に届き振り向くと、左足にピエロが噛みつきもがく関の姿がそこにあったのだ。


「関さん!!」

「ばかやろ!! 早く刺して行け!!そして本部に連絡しろ!!」


 苦痛を帯びた怒号に押され、陽刀を掴むと木へと走り出し、太い幹へと突き刺す。しかし、奥まで先がいかずうまくいかない。


「頼むから刺さってくれ!!」


 恐怖も勿論あるが、言われたままのことしか出来ない自分に腹が立つ。


「くそっ!!」


 あまりの情けなさに思わず幹を強く殴りつけた。その時だった、ドサリと木から塊が落ちてきたのだ。これでピエロだったなら確実に死を覚悟するしかない状況になる。息を飲み込みその塊に視線を移す。すると頭を押さえる銀色の毛並みの人物がそこにいたのだ。


「あーー 煩いな…… おちおち寝ることもできねーのかよ」


 緊迫した空気が寝起きらしい彼にはいまいち伝わっていないように見える。慌てて、駆け寄り彼の前ではしゃがみ込み寝起きの顔を見る。


「すいません!! すぐさま逃げて下さい!! ピエロと戦闘中なんです!!」


 緊迫した声で彼にうったえるも目の前の上下スウェットを着た人物は大欠伸をして動じた様子は全くない。


「あの!!」


 身を呈し、ましてや命の危機さえ危ぶまれている人が自分の背後にいるというのに、こちらの訴えが通じず何を呑気なことをやっているかわからない。


「速やかにここから離れて下さい!!」


 無意識に口調がきつくなってしまった。そんな自分を横目にゆっくり立ち上がる。すると銀色の癖髪が腰の辺り迄ある事に気づくと共に、その髪を揺らしなが長身男が関の方へと視線を向ける。


「やっぱり俺運ねー」


 欠伸しながら呟き、自分が握る陽刀を指さす。


「それ、貸して」

「えっ?」


 いきなりの申し出に言葉に詰まる中、目の前の男は既に自分の握っていた刀を握っていた。


「これは!!」

「貸せって言ってるだろ」


 前髪の隙間から鋭い銀色の眼孔が光り、その圧に押され少し指を緩めた瞬間一気に陽刀を自分の手から奪い抜なげつたのだ。刀は風をきり関の足から、腕に標準を写し食らいつこうとしているピエロ横の地面に突き刺さる。するとピエロは習性により噛みついて関の腕から離れ、オレンジ色に光る方へと、片手片足のまま、蜘蛛のように這って近づいたその時。長身男がスウェットのズボンウエストに手を入れた瞬間乾いた銃声の音が響き、陽刀に近寄っていたピエロが見る見る白い粉塵へと変わっていく。一瞬の出来事に驚き、目の前の男を見る。すると彼の手には銀色の拳銃が握られていた。


「火…… 器?」


 現状に未だ脳が追いつかない最中、彼は銀色の銃をズボンのウエストにしまい込み、再度大欠伸をしながら指を刺す。


「止血。した方が良いんじゃない?」


 彼のその言葉に我に返り、急いで関に近寄った。


「関さん!!」

「うっっつ」


 意識はあるものの、明らかに出血が多すぎる。


「とりあえず応急処置します!!」


 慌てて服のポケットからキッドを取り出し手当を施し始めると、その様子を見届け彼はけだるそうに歩きだし、少し明るくなりかけた空の下、木立の中に消えていった。

読んで頂きありがとうございます


1月3日20時30分以降投稿


日頃感想諸々お伺い出来ない為、

星、いいね!、感想(どんな些細なのでも構いません)

頂けると非常に有難く、励みになります。

もし宜しければ聞かせて頂ければ幸いです。 

またワンオペ作業の為、誤字脱字諸々有り読みにくい事があるかと思いますが

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