一線
この度遊びに来てくれましてありがとうございます
少しのでも楽しんで頂ければ幸いです
「灰ちゃんどうだった?」
「どうっていっても。病院に再度搬送されていきましたけど、だいぶ落ち込んでいるとは思います」
「まあしょうがないよね。5年ぐらい組んでやってたから」
「そう、何ですね…… ならあの落胆ぶりは頷けるっていうか、声かけれませんでした。あんな奈巳邇さん今まで見たことなかったので」
「そっかーー あの灰ちゃんがねーー その様子だど彼もこれで目的達成したことだし、これを機に隊辞めちゃうかもね」
「大木努さんっ、そんな事言わないで下さいよっ、自分まだ組んで浅いのにっ」
「ごめんごめんーー」
日も昇り周りに清々しい空気が漂う。どうにか全てのピエロを勝見邸敷地内から出す事なく、任務は無事終了した。だが、怪我人が多数いる為、邸宅周辺は未だにザワツいており、奈巳邇も先程搬送されて見送った。まあ自分もそれなりに疲労や切り傷などあるが、他の人よりも軽傷もあり、後回しといった感じだ。その際、大木努が自分を見つけ今に至る。因みにただ今、大木努の真の目的とやらの捜索につき合っている最中だ。彼女曰く、水辺の場所に行きたいとの事だが、敷地内にこれといった水辺がない事は、当初の警備の際から理解している。だとすれば唯一自分の知ってる水辺といえば、噴水しかなかった。なので、そこに大木努を連れてきている。少し離れているせいか、静かな中庭に、今は水が止まっている噴水が見え始めた。
「あそこです」
すると、大木努は全力で走り噴水まで行くと、太陽の位置を確認し、水の中に手を突っ込む。続けてその場所からして正面の場所でも腕を入れ何か探っている。ただ、大木努は小首を傾げて見せた。
「どうしたんですか?」
「うん? 多分こっちにもあったと思うんだけど……」
大木努は片手に持っていた水面と同色のビニール袋を自分に見せた。
「これと同じ袋のやつ。陽ちゃんも探してみてよ。多分場所はこの辺り。太陽が昇って沈むって考えると、噴水の東西にある筈なの。東側にはそれあったから西にもあると思うんだけどっ」
「ちょっと待って下さい」
自分も手を入れて探す。が、そのようなモノはない。
「ない…… ですかね」
すると大木努は再度手を入れ念入りに探す事暫し。一回大きく溜息をついた。
「しょうがないか。でもかなり残念」
丈夫肩を落とす大木努が手にしていた袋を見つめる。
「あの、それって何なんですか?」
「これ? ちょっと待って」
すぐさま大木努は袋を破ると、幾重にも重ねられたビニールを剥いでいく中、USBが現れ自分に見せた。
「藤堂の研究資料だね」
「藤堂って、前職場一緒だった人ですか?」
「そう。今回の大量ピエロの発生の要因つくった人」
「はははは。でも思ったんですけど、どうしてその人、大木努さんに自分の研究資料渡すんですか? それにあんなまどろっこしい暗号じみた手紙よこすより直接渡せばいいのに」
「多分もう藤堂死んじゃってるよきっと」
「え、いきなりそんな物騒な事っ」
「だって彼自身、誰かに狙われているって感じてたからあんな手紙送ってきたんだと思うからさ」
大木努はまじまじとUSBを見つめる。
「研究者って私含め追求し始めると留まる所を知らなくなっちゃうっていうか周り見えなくなってきちゃうんだよね」
「それは大木努さんと会って思いました。でもそのぐらい貪欲じゃないと開発って出来ないんじゃいですか?」
「うんそう。貪欲って大事なんだよね。でもねそれでもある程度の一線って存在するんだよ。ほら陽ちゃん電話口で一般の人がピエロみたいになった話ししたでしょ」
「はい」
「それきっと彼がしたんだと思う」
「…… あの即ちどういうっ」
「人体実験」
言葉が出ない。本当なら、憶測でもそんな事を言うべきではないと声をあげるべき立場。だが、この噴水で起きた事案や、地下プラントの実状を知っている為、確実に否定出来ない自分がいる。そんな自分を大木努はやんわりとした笑みを浮かべて見せた。
「きっと、彼も貪欲さに歯止めが利かなくなっちゃたんだろうね。だから誰かに止めてほしかったのかもしれない」
すると、USBの差し込み口の付け根を思いっきり折りケースを外す。こまかな基盤が露わになった所で噴水の縁に基盤を置き、手頃な石を手にした。その直後メモリに数回石を打ち付けると、メモリは粉々に粉砕され、それを噴水の水の中へと落とす。
「これで、きっとデーターは取り出せないと思うよ」
彼女は石を放りなげると、一回深い溜息を突き、水色に染まる朝空を見つめる。
「もう、何やってんのよ藤堂っ」
悔しさを滲ませたような言葉を吐きながら大木努は暫しその姿勢のまま、佇んでいた。
次回2月18日20時30分以降投稿
明日完結になります
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