大変なことばかり
この度遊びに来てくれましてありがとうございます
少しのでも楽しんで頂ければ幸いです
自分は焦っていた。
と言うのも今日は少々厄介な日だからだ。お陰で今朝から完全正装の青紫色ローマンカラーシャツにジャケットを羽織っている。そんな中、堂内に慌てて走り込むと、一瞬勢い良く足を踏み出す。が、室内は駆け込み等禁止である。すぐさま早歩きで端を進み、太壇へ行き合掌すると元来た道を足早に過ぎ去ろうとした時、自分の腕がいきなり捕まれ歩みが止まる。
「冥ちゃん」
おっとりとした声と共に、顔全体に皺を湛えた老婆が声をかけた。
「ハルさん今日もお勤めありがとうございます」
「いやいやいつもの日課だからねーー にしても冥ちゃんどうしたんだい? そんなに慌てて」
「それが、今日親父に同伴頼まれてて……」
「上様かい?」
「そう」
「確かさっき上様方が何人か合掌していったね…… ただ、いつもと様子が違うんでびっくりしたよ」
「ははは…… まあしょうがないかな今日は…… っていうか俺急ぐからまた今度ゆっくり話すよ」
「はいよ冥ちゃん」
軽く老婆に手を振ると彼はそそくさとその場から立ち去ると、静かに堂内から出たと同時にただならぬ気を発しながら歩く集団を追う。
時代は21XX年。大国が世界の覇権争いが激化し、どちら側へつくかというせめぎ合いが諸国で起きていた。それに伴い小競り合いのような争いが勃発。難民が溢れ、食糧難に陥っていた。また同じくして環境破壊も進み、ここ数年で人々が外で活動できる時間は平均4時間程度となり以前の生活とは程遠い生活を強いられている最中、誰もが予測のつかない事が世界に起きたのである。
それは今現在『烙印の暁』と名称される出来事であり、インド洋の中央付近に巨大隕石の落下したのだ。大きさは東京都とほぼ同じであり、付近の島々は吹き飛び、南半球は勿論地球全体が壊滅的な被害を受けた。地上の人口も3/2に減少し、地球の形状も変形し気候も大幅に変わった事で二酸化炭素排出量の激減。また未曾有の出来事により国同士の争いもほぼ無くなり、以前と違い屋外活動に制限は無くなった。が、再度落ちてくるかもわからない巨大隕石の恐怖と、不安。そして先行きの不透明さを抱きながらの生活を余儀なくされていた。
それに加え隕石落下から数年経った頃から、地球上に今まで存在していない生物が現れるようになる。これらは、人のようで人でならざる者であり、ただただ生きた人の心臓を取り出し続ける殺人鬼。身体能力が高く通常の人間では太刀打ちができず、世界各国、国際機関も手を拱く状況化の中、人々はその物体を形骸化こと『ピエロ』と呼んでいる。
そんな未知の生物も現れ、この先懸念を抱く人々が依代とし、急拡大したのが宗教の存在。兎角、隕石落下から15年経過した今、二大宗教が世界の権力者の背後で暗躍し彼等の地位を不動の者にしようとしていた。
それが北極星を崇拝する『スリースター教』と、太陽を祀る『太陽のつばめ』である。この二教は各国の政から始まり、中枢機関に信徒を送り込み覇権争いを繰り広げ、少しでも信者を増やすべく自分達に有利のなる手だてをいつも模索しているのだ。
にしても何故ここまでの権力を得られるようになったかと言うと、この二教団にしかピエロを殲滅できないという背景がある。なす術なく途方に暮れていた各諸国の権力者達にとっては光明が差したのだから、それなり待遇及び、囲い込みのような状態になるのは必然。
ただ彼等も教団の完全な言いなりに成り下がらないよう予防線として、信者の人数により各機関から補助金が施行される国際法を制定。それにより国と教団とのある程度の均衡を保つという役割は果たす名目にはなっていた。
そんな二教団も規模が大きくなる事により、膨大な維持費はかさみ、各諸国からの補助金は重要な資金源となっている為、各教団は信者獲得の為日夜奮闘しているのである。
また、資金に関してはセンシティブな案件でもある事から、国の役人を交え二ヶ月に一回教団幹部同士の会合を開く事が決められていた。月最終日の金曜日。この日こそ資金争奪戦となる日時であり、まさにそれが今日。しかも自分もそれに参加する事になっているのだ。
今回の会合は太陽のつばめ本部横にある別棟で行われる。場所は持ち回りで変わり、やはり本陣で行われる会合に関してはそれぞれの団体も気合いのいれようがちがう。
今回もその会議に向かうべく正装のアポロ色のクロークを羽織った幹部数人含めた団体が巨大ドーム場の拝陽堂内で合掌し、会合の成功を祈願しに赴いていたのだ。まあ常日頃、信者達の祈りの妨げならないようドーム端を闊歩するも、庇護をお願いする信者で声をかけられる事が度々ある。だが、彼女の話からして今回は凄みのある表情を浮かべた状態の上に、集団という状況下で声をかけづらい空気が尋常ではなかったというのが想像がつく。
(まああの錚々たる幹部が真顔で歩いていたら、自分だって声かけれねーわ)
そんな事を思いつつ、人の群れを追う事暫し。自分の目の前に目的の集団を捉えた。やはり特質し過ぎる気迫を纏った一行は信者達が遠くからみても察するようで、いつもなら幹部が通りすぎる直前付近で拝礼をする。しかし、今回は数メートル先まで頭を垂れ、一団が通りすぎるのを待つという異様な光景が繰り広げられていたのだ。
(あんな中に飛び込むのか?)
顔がひきつる。出きる事なら関わりたくない所だが、幹部で、自分の父親でもある陽谷十郎からのお達しでは首を縦にふるしかない。目に飛び込む情景に落胆するも、どうにもならない現状に意を決し、集団の最後尾に合流する。
「遅くなりました」
小声で言葉を発すると、前方の人間が背後を一瞥する。
「遅いぞ」
「すいません」
言葉と共に会釈をする自分には目もくれず、尚も両端を信者が出迎える道を闊歩する事数分。両側の人影はなくなり、静寂広がる建物へと入ると直ぐに、大きな両開きの扉の前まで行くと集団は足を止めた。
「相手さんは既にきているという事だ」
「この前はこちらが劣勢でしたからね。今回は熨斗をつけて倍返しにでもしましょうか」
「おいおい。とりあえず行くぞよ」
幹部が他愛のない会話を繰り出し一区切りを見計らい、最後に合流した自分、陽谷冥利は扉へと向かいゆっくりと開けた。
読んで頂きありがとうございます
明日元旦20時30分以降投稿
日頃感想諸々お伺い出来ない為、
星、いいね!、感想(どんな些細なのでも構いません)
頂けると非常に有難く、励みになります。
もし宜しければ聞かせて頂ければ幸いです。
またワンオペ作業の為、誤字脱字諸々有り読みにくい事があるかと思いますが




