#3 学園最強プリンセスの秘密
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環姫に一緒に帰ろうと誘われ、校門前で待っていた僕は、あまりの遅さに心配になって彼女を探しに行った。すると、校舎の裏で環姫とアイドル系男子の藤堂潤が向かい合っていた。
「月城さん。あの影の薄い彼氏君と別れて、ボクと付き合おうよ」
これは偽装恋愛のはずなのに、今にも環姫を奪われそうな状況になぜか気が気でならなくなった。壁際に追い詰められてきっと睨んだ環姫の顎を、藤堂が引き上げて唇を寄せた。
「まずは既成事実を作っちゃおうかな」
「嫌よ。それに御影くんを悪く言わないで」
僕が駆けだそうとした瞬間、イヅナのホイップとマカロンがキィと鳴いた。すると無数のイヅナたちがどこからともなく現れ、藤堂の周囲に巨大な白い竜巻を起こした。
「イヅナが藤堂を……食ってる?」
イヅナ達が飛び去った後には、藤堂の姿はかけらもなかった。僕は目の前の光景が信じられず、ただその場に立ち尽くしていた。
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翌日、藤堂の存在がクラスから消えた。周囲が何事もなかったかのように振舞っていることに、僕は心底怖くなった。藤堂の席があった場所には白い毛玉が落ちていた。その横を、クラスメートが「なんか頭が痛い」と言いながら通り過ぎ、窓の外から僕を牽制するかのようにキィ、とイヅナの声がした。監視されているかも知れないと思い、背筋が寒くなった。
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午後から放課になり、一緒に帰ろうと言う環姫を何とか断って、後ろを何度も振り返りながら逃げるように帰宅して、中学校の入学式の写真と卒業アルバムを取り出した。
「やっぱり佑樹たちが消えてる」
環姫に告白した何人かの男子が消えていた。そして僕以外、みんな彼らのことを忘れている。あの時、藤堂を襲った大量のイヅナ。あいつらは一体何者なんだろう。
スマホで検索すると、「憑きもの」というワードが目に飛び込んできた。
「憑きものは、巫女や行者が使役する動物霊で、憑きもののいる憑物筋の家系は裕福で繁栄し、彼らが憎む者に害を及ぼす。憑きものには、蛇のトウビョウや犬のイヌガミ、狐のイヅナ等がある。イヅナは長野県の飯綱山にルーツを持つ小さな狐で霊能者にしか見えず、イヅナから身を守るには飯綱使いの怒りを買わないことが一番である」
佑樹たちも、藤堂みたいに環姫のイヅナに消されたのかも知れない。そう思うと背筋が粟立った。
ちょうどスマホにLINEメッセージが入った。環姫からだ。
「おうちデートに来い」
恐怖に身を震わせながらも、危険が及ぶ前にこの秘密を突き止めなければならないと僕は覚悟を決めた。




