7-6 禁断の選択
隆は絶望的な状況に追い込まれた。愛する仲間二人が人質に取られ、敵は圧倒的に多い。
「どうしますか、田中隆?」
ダミアンが嘲笑う。
その時、隆の脳裏にヴィクターの言葉が甦った。
「管理者たちと同等の力が必要だ。核エネルギーレベルの魔法が」
隆は震える手で、密かに持参した核融合装置を取り出した。小型化に成功したものだが、出力は実験室のものより遥かに大きい。
「その装置は何だ?」
「これは……」
隆は心の中で葛藤していた。この装置を使えば、敵を一掃できる。でも、制御を失えばルナとエリーザも巻き込んでしまう。
核の力——人類が生み出した最も危険な力。それを使うべきなのか。
「田中さん……やめて……」
微かにルナの意識が戻ったようだった。
「みんなを……巻き込まないで……」
だが、隆にはもう選択肢がなかった。このまま捕まれば、研究は敵の手に渡り、世界は永遠に管理者の実験場のままになってしまう。
「すまない……ルナ、エリーザ……」
隆は核融合装置に魔力を注入し始めた。
「まさか……核融合魔法か!」
ダミアンが驚愕する。
「そんな危険な魔法を、ここで使うつもりか!仲間も巻き込むぞ!」
「分かっています……でも、他に方法が……」
隆の瞳から涙が流れた。愛する人を守るために、愛する人を危険に晒さなければならない矛盾。
「でも、絶対に制御してみせる……」
装置が光り始めた。核融合反応が始まっている。
「みんな、逃げろ!」
ダミアンが部下たちに叫ぶ。しかし、もう遅かった。
森に、小さな太陽が生まれようとしていた。
隆は必死に反応を制御しようとする。ルナとエリーザを傷つけてはいけない。でも、敵は確実に無力化しなければならない。
「頼む……制御できてくれ……」
隆の祈りが、核の炎に向かって叫ばれた。
物理学者田中隆は、ついに最も禁断の力に手を染めてしまった。
この選択が正しかったのか、それは神のみぞ知ることだった。




