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7-4 拉致事件
翌朝、隆が実験室で一人作業をしていると、エリーザが慌てて駆け込んできた。
「田中さん!大変です!ルナさんが……」
「ルナさんがどうしました?」
「昨夜、寮から姿を消したんです。部屋には争った形跡があって……」
隆の血の気が引いた。
「まさか……」
その時、実験室に魔法通信が入った。見知らぬ男の声だった。
「田中隆。我々は君の仲間を預かっている」
「誰だ!」
「純血魔法師協会の最高幹部だ。君に取引を持ちかけよう」
通信の映像が現れた。そこには、縄で縛られたルナの姿があった。
「ルナさん!」
「田中さん……来ては、だめ……」
ルナの声は弱々しかった。明らかに魔法で弱らせられている。
「条件は簡単だ。君の研究資料と、核融合の技術をすべて渡せ。そうすれば、彼女は無事に返す」
「冗談じゃない!」
「君に選択権はない。24時間以内に、学院の東の森で待っている。一人で来るのだ」
通信が切れた。隆は拳を握りしめた。
「田中さん……」
エリーザが震え声で呟く。
「私も……行きます」
「だめです!危険すぎます」
「でも、ルナは私の親友です。見捨てるなんてできません」
隆は迷った。確かにエリーザの気持ちは分かるが……
「分かりました。でも、絶対に僕の指示に従ってください」




