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5-6 古書の秘密

翌日、隆たちは学院長からもらった古書を詳しく調べていた。


「この部分を見てください」


ルナが古い文字を指差す。


「真理の探求者よ。物質の根源は見えざる波にあり。観測によりて現実は定まり、意識によりて世界は変わる。されど過ぎたる探求は、探求者自身を虚無に帰さん」


「これは……量子力学の危険性を警告しているようですね」


隆は古書の著者に興味を持った。500年前にも、量子力学的な現象に気づいた人がいたのか。


「この著者について、もっと調べる必要があります」


セレナが提案する。


「しかし、今は純血魔法師協会の監視もあります。慎重に行動しなければ」


その時、実験室に警報音が響いた。セレナが張った警戒魔法が反応したのだ。


「誰かが近づいてきます」


セレナが影魔法で周囲を探った。


「学院長です。一人で来ています」


しばらくして、学院長が地下実験室に現れた。


「君たちの実験、感じ取れたよ」


学院長の表情は深刻だった。


「量子的な魔法を使ったね。非常に危険だ」


「学院長も量子力学を?」


「少しは知っている。その古書の著者は……私の師匠だった」


「え?」


思わぬ告白に隆たちは驚いた。


「500年前……それは嘘だ。実際には100年前、私がまだ若い研究者だった頃の話だ」


学院長の瞳に、遠い記憶の影が宿る。


「彼も君と同じように、量子魔法を研究していた。そして……消えた」


「消えた?」


「量子的存在になりすぎて、この現実世界から消失してしまったのだ。君も気をつけなさい。その力は使い手を選ぶ」


隆は背筋に冷たいものを感じた。昨夜の体験が、決して偶然ではなかったことを理解した。


「でも、彼の研究は無駄ではなかった」


学院長は古書を開いた。


「この世界の真の姿を理解するためには、量子力学が必要だ。ただし、正しい方法で」


学院長は隆を見つめた。


「君なら、師匠が成し遂げられなかった真の量子魔法を完成させられるかもしれない。しかし、それには時間と慎重さが必要だ」


物理学者田中隆の挑戦は、予想以上に深い謎に満ちていた。


この世界の真実は、まだ霧の向こうにある。

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