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4-3 不審な視線
その日の午後、隆は講義を受けるために教室に向かっていた。廊下を歩いていると、何か視線を感じる。
振り返ると、見知らぬ上級生らしき生徒が隆を見つめていた。視線が合うとすぐに別の方向を向いてしまう。
「気のせいかな……」
しかし、その日一日、同じような視線を何度も感じた。講義中も、食事中も、図書館でも。
「田中さん、最近注目されてますね」
エリーザが心配そうに声をかけてきた。
「何か変なことでもありましたか?」
「いえ、ただ……あなたの実験の噂が学院中に広まってるんです。『水を分解する男』『雷を自在に操る異邦人』って」
隆は頭を抱えた。目立ちすぎたようだ。
「そして……」
エリーザは声を潜めた。
「保守派の教授たちが集会を開いているという噂もあります。あなたのことを『危険分子』として監視しているとか……」
「監視?」
「気をつけてください、田中さん。この学院にも、変化を嫌う人たちがたくさんいます」