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3-6 暗雲の兆し
その夜、学院の一角で秘密の会合が行われていた。
「田中隆……やはり危険な存在だ」
暗いローブを着た人影たちが円を描くように座っている。
「学院長が彼を支援するとは……時代も変わったものだ」
「いや、これは好機かもしれない」
中央に座る人物が立ち上がった。
「彼を利用するのだ。彼の知識を我々のものにし、その後で……処分する」
「しかし、彼は警戒しているでしょう」
「心配ない。我々には切り札がある」
男は不気味に笑った。
「『彼女』を使えば、田中隆など簡単に篭絡できる」
「まさか……あの人を?」
「そうだ。時が来れば動いてもらう。今はまだ、彼に泳がせておこう」
会合の参加者たちは無言で頷いた。
学院の外では、風が不吉に唸っている。隆の周りに、着実に暗雲が立ち込め始めていた。
しかし隆自身は、古書の研究に夢中で、その危険にまだ気づいていない。
「この理論をもとに、もっと高度な魔法を開発できるかもしれない……」
隆の部屋では深夜まで、研究の光が灯り続けていた。