3-5 新たな仮説
学院長室を出た隆は、与えられた古書を抱えて図書館に向かった。ルナとの約束があったのだ。
「田中さん、どうでしたか?」
心配そうに迎えるルナに、隆は事の顛末を説明した。
「学院長が味方に?それは予想外ですね」
「この本を見てください」
隆は古書を開いた。そこには確かに、原子に似た概念が記されていた。しかし……
「これは……完全に同じではありませんね」
ルナが指摘する通り、書物の理論は原子論とは微妙に異なっていた。
「『エーテル粒子』?『霊的結合』?」
隆は困惑した。この世界の過去の理論は、科学と魔法の中間のような概念だった。
「でも見てください、この部分」
ルナがページをめくる。そこには驚くべき記述があった。
「異世界からの知識者が現れし時、真の物質理論が明らかになる。彼は見えざる粒子の真理を持ちて、世界の根幹を揺るがさん」
「これは……まさか」
「予言でしょうか?」
隆とルナは顔を見合わせた。偶然にしては出来すぎている。
「ルナさん、もっと詳しく調べてみましょう。この書物の著者が誰なのか、なぜ封印されたのか……」
「はい。でも慎重に。学院長の警告通り、敵もいるようですから」