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3-3 過去の記憶
「君の理論は……どこかで聞いたことがある気がする」
学院長が突然つぶやいた。
「え?」
「遥か昔、私がまだ若い研究者だった頃……似たような理論を唱えた学者がいた」
学院長は立ち上がり、本棚の奥から古い書物を取り出した。
「『物質構成論』……著者不明。500年前の文献だ。この中に、君と同じような『最小粒子』の概念が記されている」
隆は驚愕した。この世界にも原子論を唱えた人がいたのか?
「しかし、この書物は『異端』として封印されていた。当時の魔法師たちは、この理論を危険思想として弾圧したのだ」
「なぜ危険思想なんですか?」
「考えてみなさい。もし君の理論が正しければ、従来の魔法教育はすべて不完全だということになる。既存の権力構造が根底から覆される」
学院長は窓の外を見つめた。
「だが……真理は真理だ。それを恐れて隠すべきではない」