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不朽の旅

作者: 徘徊猫

 草原は遥か遠くまで続いている。心地よい風が吹き付けて、草の上に倒れた体を優しく包み込む。

 太陽が暖かな日差しで私を照らして、この世界にはひとりぼっちの場所なんてない、そう思えた。


 冒険することが好きだ。木の上や遠くにある湖、誰も知らない昔の遺跡。それらは目の前にあるモヤを打ち払い、私に今まで見たこともなかった感動を与えてくれる。

 小さな頃から見たこともない景色を夢見ることが好きだった。地底まで続きそうな深い谷に、天を突きそうな山、そして未だに見たことがない広大な海。

 いつかもっと広い外に出て多くのことに触れ合いたい。それが私の夢になった。


 身長が伸びた。もっと早く走れるようになった。体を鍛えた。多くのものを背負えるようになった。道具の扱い方を学んだ。柔軟にさまざまな問題に対処できるようになった。旅に出た。意外にも順調に、風は私の帆を押してくれた。

 川を越え、丘を越え、谷を越えて山を越えた。問題はひっきりなしにやってくるが、心の準備をする暇がなくとも生きるためには対処しなければならない。

 前に進んで、生きるためにはそれしかない。前に進んで、あなたにはこれしかない。周囲には誰もいない、私だけがここに辿り着いたのだから。

 貴方の居場所はここじゃない。なぜなら、貴方は来訪者だから。


 広大な海を目にすると、自然と私は足を止めて砂浜に腰を下ろした。

 砂は波に痕跡をかき消された。あの海には多くのものが呑まれて消えたのだ。だが、私はあの場所に足を踏み入れることはできない。なぜなら、海はあまりにも深く、一度沈めば帰ってこられない。人の生きる環境ではない。その暗闇に光が届くことはない。

 夜になると冷たい空気が肌を掠めた。いつまでそうしていたのだろう。果ての見えない水平線はあまりにも遠い。まるで永遠になにもない大海原が続いているように。


 気づくと、私は光りに照らされていた。見上げると空を裂く流星があの広大な海の果てを目指していた。それは闇夜を引き裂く一条の光だった。

 空はいくら手を伸ばしても届くことはない。本当にそうなのだろうか? あの流星は遥か遠い場所から来た。地上に落ちた一条の光が天上に還ることは二度とないだろう。けれど、その光は目に焼きつくほどに眩く、黎明の訪れを感じさせた。

 前に進め、貴方はその選択を下した。太陽に焦がれた人間がその身を光で焼かれたように、私もこの意志に身を投じる。

 この旅が光に辿り着くことを願って。

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