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***アンファミーユ第3部(En Famille Part 3)***  作者: 湖灯


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【メェナードさん VS ナトー①】

 クラウディの報告によると、メェナードさんによるナトーのスカウトの仕方は、どうも私の時にしたような生易しい方法ではないことが分かった。

 スカウトに使用されたのは、レストランやホテルとは違い、爆弾や鉄パイプによる武器。

 しかも自分自身は常に安全な場所に居て、急遽集めた部下や、この目的のために集めた一般人のアルバイトまで使った。

 ナトーは襲って来るメェナードさんの手の者たちをことごとく倒したのは言うまでもないが、なにかおかしい。

 メェナードさんらしくない。

 特にメェナードさんは日曜日に直接ナトーに会い、100,000ユーロの月給を提示した後にそれで不満なら上乗せ分を言ってくれと金でナトーを雇おうとワザと彼女を侮辱したこと。


 ナトーは卑しくとも私の妹。

 決して金で釣られるような安い魂の持ち主ではないことは知っているはず。

 特に私に比べて、ナトーの存在にいち早く気が付き、彼女を私に合わせるべきかどうか調べ上げていた彼なら尚更のこと。

 結局メェナードさんはナトーを私に会わせることはしなかった。

 それは彼女がグリムリーパーと言う私にとって最大の障壁を持っていたから。

 そして殺そうとしたが、結局殺すことをためらい、自身の生命的存在を断ち切ろうとまでした。

 おそらくそれはグリムリーパーが犯した過去の事実がなければ、すぐにでも私に会わせたいと思わせるナトーの優秀な資質を見抜いていたからに違いない。

 そんなメェナードさんが、ナトーを力づくでとか金でスカウトを試みるなんてことは在り得ない。


 月曜日から仕事の合間に、その理由をずっと考えていた。

 そして土曜日の早朝にある仮説が浮かび、私は慌てて準備を始めた。

 医療機関から大量の血液と輸血用の機材、それに外科手術の道具や麻酔。

 医者の手配には苦労したが、それもようやく決まったころ、クラウディから報告がありメェナードさんがナトーの命を狙っていることを伝えた。

 危惧していたことが現実になる。

 私がナトーを殺そうと決意していることを知ったメェナードさんは、私に代わってナトーを殺すつもりなのだ。

 それは私の手を汚させないため。

 それは私に後悔させなせないため。

 それは私の全てを守るため。

 私がナトーを殺そうとした時、100%の確率でその命を奪ってしまう。

 しかも何の弁解も許さないまま一瞬で彼女は死ぬ。

 それで私の目的は達成される。

 しかしいつの日にか私はそのことを後悔する日が来るだろう。

 その時になって、どれだけ懺悔しようとも、彼女の命は戻ってこない。

 おそらくその時に私は狂ってしまう。

 自らの意志で、自らの手で、自らが最も求めていた大切な家族を殺してしまった後悔の念に圧し潰されて。

 だからメェナードさんは、私にそれをさせないためにナトーを殺すことを決意した。

 今度はザリバン高原の時とは違い、彼も本気だ。

 他人がナトーを殺したのであれば、遠い将来に私が後悔する日が来たとしても、殺した人を恨むことは出来る。

 たとえ原因のタネを私が撒いたとしても、私の心は本意ではなかったのだと嘘をつくことも出来る。

 これは誰もが持つ、生きるために必要な自己防衛能力であり、どれほど優秀な人でもこの自己防衛能力には抗えない。

 それは私の最も大切な他人であるメェナードさんだとしても変わりはない。

 他人への恨みなんて、自責の念に比べれば比較にならないほど軽い。

 自責の念は、自己防衛能力をも打ち破り、その人を自殺に追い込むことも出来る。


 外科医とスタッフの手配が済むとすぐに私は医師たちを連れて飛行機に乗り込んだとき、クラウディから新たな報告が入った。

 それはメェナードさんが、ナトーの確保に成功したことだった。

 私は時計を見た。

 おそらくもう時間はない。

 私はパイロットに規則を無視して出来るだけ早く飛ぶように指示をした。

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