【激しい葛藤と、メェナードさんとの別れ①】
その後ジャーヴィス・ペンドルトン氏と名乗ったメェナードさんは、パリでテロを起こそうとして失敗したジュジェイのために信用を失ったことで廃止されたフランス支部の再建に着手しはじめた。
メェナードさんと知り合って丁度10年。
10年前は主任クラスで部下もいなくて、ひとりで雑用を任されていたメェナードさん。
そのメェナードさんが、いまは支部長クラスになろうとしている事は私も嬉しくないわけではない。
あれほど嫌っていた強硬派にメェナードさんが入ったのも、妹のナトーと私を繋ぐため。
そしてナトーが私の恋人を殺したグリムリーパーだと分かり、その証拠を消すために彼女を殺そうとしたことも私のため。
妹が私の恋人や友人を殺したグリムリーパーだと知らなければ、私は戦場で死んだナトーを永遠に可愛い妹として愛し続けることが出来ただろう。
けれども私はメェナードさんを許せなかったかも知れない。
いくら戦争といっても、実の妹を殺されたのだから。
でもメェナードさんは、結局ナトーを殺さなかった。
戦闘状況報告書を読んだ私も、あの作戦が完璧だったことは理解している。
結局最終的には、物量に勝る多国籍軍には長期戦になるとかなわなかったことは確かだが、多国籍軍の第一波の攻撃部隊は完全に制圧できたはず。
いくらその中にグリムリーパーが混じっていたとしても。
ナトーを殺せなかったメェナードさんは、いったん死を選ぶが私が差し向けたカールを道連れに出来なくて生き残ってくれ、次の手を打った。
それはナトーを永久に檻の中に入れてしまう作戦。
これは時と共に私の考えが変わるのを待つ、持久戦だ。
けれども私はそれを受け入れず、自分でナトーを始末する道を選び彼女を解き放った。
メェナードさんはわざわざ危険を冒してまで、私に会いに来てくれた。
強硬派の新鋭が、穏健派として確固たる地位を築き上げた私と面談するなんてことを他の強硬派が知ったなら彼の今の地位だけでなく命も危ぶまれる。
私だって、おそらく無事では済まない。
だからメェナードさんは、私にしか分からないジャーヴィス・ペンドルトンと言う偽名を使って私の前に現れた。
しかし私自身メェナードさんのことを密かに「私の足長おじさん」と、ズーっと思っていたけれど、それを彼に伝えた事はなかった。
だからジャーヴィス・ペンドルトンと言う人が空港で合いたいというメモを渡されたとき、とても驚いたとともにその名前が懐かしくてメェナードさんがそのことを知っていると分かりとても嬉しかった。
メェナードさんは私の考えを知り、それを止めるために来てくれた。
私はやっぱりメェナードさんは、私の足長おじさんだと思っていながら、意地を張ってしまった。
メェナードさんは、間違ったことはしないし、彼は常に私を良い方向に導いてくれていた。
だから私もメェナードさんの言う通りに素直になりたかった。
でも、私には想像もできなかった。
私の恋人ローランドや生れてはじめて友達になってくれたオビロン軍曹を殺したナトーと、仲睦まじくお茶をする私の姿を!
あってどう話せば良い?
亡くなった命は2度と戻ってこない。
私が幾らその事実を隠していたとしても、素直にナトーを受け入れることは出来ないように、ナトーだってもし自分が姉の恋人や友達を殺したことを知ってしまえば平気ではいられないはず。
もしそうなれば、私たちは出会う以上にお互いを避けてしまうだろう。
姉妹という間柄から、最も遠い存在として。
永遠に……。




