【ダニエルとの再会】
私はイギリスの本部に出向き情報部に行った。
「何の用だ!?」
セキュリティーキーを開けて入って来た私を不審に思った中年の男が、怪訝な顔をして私の侵入を阻止する等に前に立ちはだかり、すぐに情報部のエージェントも周りを囲んだ。
無理もない。
この部屋に自由に入ることが出来るのは、組織の中でも特に限られたものだけで、その限られた者たちが誰であるかはトップシークレットなので彼らも知らない。
「東欧支部統括部今日のサラ・アルティメス・ブラッドショウだ。アシスタントマネージャのダニエルに会いたい」と言い、彼らの前に身分証明書を向ける。
「東欧支部の、サラ部長……」
身分証明書を見た彼らは、目を丸くして驚いた。
何故なら彼らは東欧支部統括部長である私の名前は知っていても、私本人との面識もない上に写真ですら見たことはないのだから。
なぜ情報部に務める彼らが、私の写真を見たことが無いのか、それは彼らが作ったシステムのため。
POCの上級幹部の顔写真は、全世界のネット回線に関与して送信した時に異なる印象のものに変換される仕組みとなっている。
だから社内の人間であっても、初対面である以上私の顔を知る者はいない。
「よう、サラ。久し振り!」
しばらくすると、ダニエルの陽気な声が聞こえた。
ダニエルとはイスラエルのハイファに造られたPOCの幹部候補生研修施設で一緒だった。
POCの幹部候補生研修施設は新設されたばかりで、そこに入るためにはスカウトの目に留まらなければならない。
スカウトたちは世界各地に居て普段は通常の業務を行いながら、POCの未来を託すに値する天才たちを探している。
私をスカウトしたのは、メェナードさん。
最低条件はIQ150以上で、母国語の他にあと二か国語の読解と会話が可能なことと、更に世界上位100位以内の大学に確実に合格できる総合的な学力が求められる。
年齢の規定は無かったが、当時まだ12歳だった私は一応表向き17歳と言う事にして入所したが、ダニエルを始め殆どの子は18歳以上だった。
研修所の中で座学には何の問題も無かったが、やはり10代で6歳も年下の私には格闘技の習得など体力的に負担のかかる研修は辛かった。
そんな私を虐める急先鋒だったのが、ダニエルだった。
卑劣な虐めに対してはじめは苦労した物の、私は親友だったルーシーの勧めでサオリと言う日本人から合気道を教えてもらい、ダニエルと決闘し勝利することで虐めから抜け出した。
その後、私たちは和解して、研修施設を卒業している(実際には一緒に卒業したわけではなく、私は彼らより1年早く卒業した)
「ダニエル、元気そうね」
「ああ、しかし大活躍だな、サラ……あっ、ルーシーの件、本当に残念だったね」
ルーシーの件とは、ゴンゴの革命に参加して亡くなった研修所の同級生で私の親友ルーシー・スコットのこと。
彼は既に要職についていた私に変わって、彼女の故郷である南アフリカの実家まで遺体を送り届けてくれた。
「で、忙しいはずのサラが、こんな所にまで来て僕に何の用?」
「アサムの所在を知りたい」
「アサム?」
「ザリバンの首領アサム・シン・レウエルだ」
「そ、そんなこと……」
「スイス銀行の口座まで開示できるお前たちが、たかがザリバンの首領1人の居所が分からないなんて冗談は言わさないぞ」
「きょ、許可は取ってあるんだろうな」
「ああ一族の長と、女王陛下の許可はある」
私はダニエルの前に2通の手紙を差し出した。




