【クラウディの報告】
カールからメェナードさんの消息が届けられて5日後、ロシア政府の協力を得てアフガニスタン情勢を探っていたクラウディが戻って来て報告をした。
クラウディは何か特別な情報を得ることに成功したらしく、その目は仕留めるべき獲物を見つけた虎のように鋭い輝きを見せていた。
「お疲れ様。で、どうだったの? なにか良いモノを見つけたみたいだけど」
「さすがボス。お察しが早いです」
クラウディ―はそう言ったあと、鋭利さが増して行く目の輝きを抑えるためハンカチで目蓋についた汗を拭ってから言った。
「やっとボスの恋人と、私の母と妹の仇を見つけることができました」と。
“グリムリーパー!”
妹、ナトーの安否も気になっていたが、グリムリーパーの名前を聞いて驚いた。
グリムリーパーはメェナードさんも追っていた。
やはりグリムリーパーは未だ生きて存在していたのだ!
仇!
ハイティーン前、私が唯一体を許した男、ドイツ連邦軍特殊部隊ローランド・シュナイザー中尉を狙撃して殺害したヤツ。
どんなヤツなのだろう?
ローランドと同世代なら30を超えているはず。
クラウディがファイルの中から、1枚の写真を取り出す。
写真はフランス外人部隊に所属していて、DNA鑑定の結果私の妹である可能性が非常に高いナトー軍曹。
「これは?」
「コイツがグリムリーパーの正体です」
クラウディの答えに私は驚いた。
妹が⁉
いや、おかしい。
妹がグリムリーパーな筈はない。
妹のナトーは私より4歳下。
彼女がグリムリーパーだとすれば、10歳前後の時から戦場に出て狙撃を行っていたことになる。
私は動揺を隠したまま、少し若すぎないとクラウディに言うと、彼女もまたそれは私も思いましたと言って次の写真を見せてくれた。
今度の写真は何枚もあり、それは全て戦場で死んだザリバン兵の写真だった。
“これは!”
何枚かの写真の中に折り重なっている死体の写真があった。
その写真の死体には、ある特徴があった。
それは全員が頭を1発で撃ち抜かれている事。
「処刑?」
私の問いにクラウディが冷静に答える。
「この地域の戦闘は重要な敵の拠点を数人の外人部隊が占拠し、その拠点を奪い返すために次々にザリバン兵が攻撃を仕掛けたもので、非常に激しい戦闘であったことが記録されています。とても処刑を行う暇など無かったはずです」
「つまり、この死体は、その乱戦の中で?」
「そのとおりだと思います。にわかには信じがたいでしょうが……」
「この拠点を占領していたメンバーは?」
「はい、調べました。メンバーはナトー軍曹を含めて6人で、裏付けも取りました」
クラウディが言った裏付けとは、グリムリーパーが中東で活動していた頃のメンバーの動向のこと。
彼らのうちナトー軍曹以外の5人は、既に当時外人部隊に入隊していたものの、中東に派遣された期間は限られているうえ、当然多国籍軍側であるため仲間を正面から狙撃することは出来ない。
ただナトー軍曹だけが、過去の経歴が無かく調べることができなかった。
「この6人の狙撃スキルは?」
「ブラーム兵長とフランソワ上等兵は、狙撃手としてのスキルは高いですが、とても乱戦の中で敵の頭を1発で撃ち抜くことは無理でしょう。ただナトー軍曹だけは違います。彼女は外人部隊の敷地内にサラ様が造られた実弾による市街戦シミュレーターの最難関コースを入隊テストの時に1回でクリアしています」
「入隊テストの時に……」
ナトーが最難関コースを1発クリアしたことは知っていて、私は姉としてそれを誇らしく思っていたが、当然それは他の人のプレイを研究した結果だと思っていたが、予備知識もない状態の入隊時にそれをやってのけるとは思ってもいなかった。