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【メェナードの告白①(Maynard's confession)】

 熊かと思って身を潜めていると、近付いて来るそのシルエットは人の物だった。

 “いったい、何者⁉”

 俺の手足を縛っていないと言う事は、敵ではないらしい。

 もしかして、あのバイクに乗っていた女⁉

 人間の欲と言うのは不思議なものだ。

 さっきサラに貰った狙撃銃を無くしたことを悔やんでいたと言うのに、何故だかあのバイクの女のことを思うと気持ちが少し晴れてくる。

 背が高く、スラっとしているくせに強烈な個性を持ったボインボインの胸。

 左程大きい訳ではないけれど横に張り出した骨盤は、安産型。

 銀髪にオッドアイと言うのも、希少価値があるだけでなく、そこに散りばめられた目や鼻の配置や大きさはパーフェクト!

 タイプは異なるが、芯の強そうなところが、どことなくサラに似ていると思った。

 しかしサラとは違い、押しには弱そうな幼さも残っていて実に興味深い。

 後ろからあのボインを鷲掴みにしてやれば、後は悪党仕込みの話術で何とかモノに出来そうな気もする。


「気がついたのか」

 男の声が、俺の妄想を打ち砕く。

「メェナード?」

「わるいな、折角助けに来てくれたのに失神させてしまって」

 そうだ。

 俺はあの時メェナードのキックを食らい、失神してしまったのだ。

 しかしあれほど頑なに救出されるのを拒んでいたヤツが、何故俺と一緒にココに居る??


「しかし上手い手を考えたモノだな。ワザと俺に打たせて失神してしまうなんて。サラの入れ知恵なのか?」

「ま、まあな……」


 誰が聞いても、嘘と分かる返事をしたが、まあ俺のプライドだけは守られた。


 なるほど、そう言うことか!

 失神してしまった俺を道連れに出来なくて、メェナードは已む無く俺を担いでアノ洞窟から出たってことか……そう言えばあのキツイ性格のサラの目が、メェナードの話をするときだけ異様に優しさに満ちた目になっていたっけ。

 たしかにコイツは優しいし、サラはああ見えてその優しさに飢えている。

 死ぬつもりだったのに、俺を助けるためにココにこうして居るのだからサラが想うのもうなづける天才的な優しさの持ち主ってわけだ。


「ところで、死ぬのはどうなった?」

「やめた」

 俺はどうして死ぬ気になって、どうしてやめたのかという野暮な話を聞いた。


「サラの傍に居たのだから君も知っていると思うけれど、実は僕もサラの妹の行方を捜していたんだ」

 メェナードの一人称が、俺から僕に変わった。

 それから彼は事の詳細を俺に話してくれた。


 サラの妹、ナトーの正体を知るためにザリバンに入り彼女の義父であるヤザに近付いたこと。

 そしてナトーを誘き出すために、あの洞窟要塞を作ったことを。


「ナトーの正体? サラの妹と言うだけではダメなのか?」と、俺は彼の行動を不思議に思って聞くと、メェナードはそれだけではサラに合わすことは出来ないと言った。

「何故⁉」

「その状態で2人を合わすことは、最悪の結果を招く恐れがある」

 メェナードは暗い顔をして言った。

「最悪の結果?」

「そう……ナトーはグリムリーパーだった」

「グリムリーパー‼」


 久し振りにその名を聞いた。

 中東イラクで多国籍軍の兵士を数百人も殺害した伝説の狙撃兵。

 しかし妹のナトーは、サラの4つ下のはず。

 もしナトーがグリムリーパーだったとすれば、彼女は10歳そこらから狙撃兵として活躍した事になる。

 だから俺は、それは有り得ない事だとメェナードに言った。

 彼は、僕もそう思っていたかった。と小さく言った。


「ナトーからそのことを直接聞いたのか?」

「いや。ナトーは決して自分がグリムリーパーだったことは言わない……いや、言えないだろう」

「言えないとは?」

「彼女は自分のしたことを悔いている。……いや、グリムリーパーだった自分を憎んでいる」

「ほ、本人の口から聞いたのか?」

「まさか、おそらく聞きに行ったら、二度と帰って来れないだろう」

 姉妹と言う事もありサラに似た美人スナイパーだとイメージしていたが、メェナードの今の言葉でそのイメージが崩壊した。

 おそらくグリムリーパーと呼ばれていたナトーは、サラとは似てもいない狂暴で野蛮な容姿を持った悪魔のようなヤツに違いない。


「……しかし、本人の口から直接聞いたんじゃねえとなると、デマかも知れねえぜ」

「デマではない」

「なぜそう言い切れる?」

「僕はアノ地下洞窟の中で、ナトーをグリムリーパーとして育てた義父のヤザがそう言うのを聞いてしまったんだ!」

 メェナードは俯いて頭を抱えた。

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