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【カールの奮闘③(Carl's struggle)】

 アジトの洞窟の中は異常に暑かった。

 直ぐにコレは只事ではないと感じた。

 洞窟の中を案内人に書いてもらった見取り図通りに司令部を目指す。

 途中、何人かのザリバン兵や多国籍軍の兵士に出くわしたが、彼らは見取り図なんてものは持っていないからコノ異変に気付いて洞窟内を右往左往しながら逃げ惑うだけで、特に俺に気がついて銃を撃って来る奴は居なかった。

 熱は司令部が近くなるほどに暑さを増していて、近付くにつれその原因が分かって来た。

 オレンジ色の炎の中に、ひとりの男が立っていた。

 黒い覆面を頭から被ったその男は、様々な個所に火をつけながら狭い洞窟内を、涼し気に歩いていた。


 メェナード!

 ヤツは死ぬ気だ‼


 慌てて駆け寄ろうとしたところ、彼が気付いて撃ってきた。

「俺だ。カールだ!」

 俺は彼が俺のことを多国籍軍の兵士だと思い、間違って撃っているのだと思い名乗ったが彼は知っていた。

 彼の銃の腕なら、油断しきっていた俺と言う的を初弾で外してしまうことはない。


「何をしに来た!早くココから立ち去れ‼」

「メェナード!オマエこそ何をしている⁉ もう負けは決まった。直ぐにココから脱出しろ!」

「俺はココで死ぬ!ソレがココで多くの人たちを死なしてしまった俺の定めだ」

「それが戦争だ! 一人で責任を負うな‼」

「責任じゃない!コレは義務だ!」

「義務⁉」

「ああ、戦争を仕掛けたものの義務だ」

「勝っても死ぬ気だったのか」

「勝つことはないが、引き分けになってもな」

「勝つことはない?」


 メェナードと俺はお互いに銃を撃ちながら話していた。

 彼は俺を近付けさせないように。

 俺は何とか彼の攻撃を無効化できないか模索しながら。

 しかしやはりメェナードは賢い。

 弾切れがおきないように2丁の拳銃を順に使い、片方の銃を使っているときに使い終わったもう片方の銃に給弾していた。

 俺は背中に担いでいたSAKO TRG 10狙撃銃を手に持ち、タイミングを待った。

 タイミングはメェナードが今持っている銃を撃ち終わり、もう1丁の拳銃に持ち替えるとき。

 そのためには彼に銃を撃ってもらわないといけないので、狙撃銃を持っていることがバレないように俺は動きながら自身の拳銃で応戦していた。


 そして、そのタイミングは来た!


 俺は素早く狙撃銃を構え、メェナードが手を伸ばす先にあった銃弾補充済みの拳銃に目掛けて銃弾を放つ。

 予定通り、机に置いてあった銃は彼が手に取るより一瞬早く、俺の放った銃弾に弾き飛ばされていった。

「やったぜ‼」

 そう声を上げて身を乗り出したとき、俺の直ぐ横を銃弾が通り過ぎた。

「⁉」

 見るとメェナードは、もう1丁別の拳銃を手に持っていた。

 まるでマジック!

 どこから出たのか一瞬狙撃銃のスコープを覗いていたから、わからねえ。


 とりあえず俺の方は手の内を全て相手に見せてしまったから、もう勝ち目はねえ。

 このまま炎に包まれて、やがては火薬庫に火が回り爆発してしまうアジトと共に運命を共にしようとしているメェナードと共に死ぬか、それともメェナードを諦めて一人でココから脱出するか……。

 どっちにしても不細工としか言いようがない。


 そのとき、心の中に呼びかける声が聞こえた。

 すこしキツイが、根は優しい家族思いの捻くれた女の声。

 その声が、祈るように言った。

 “カール、お願いだからメェナードさんを助け出して!”と。

 俺は腹をくくった。

 メェナードに勝つには、もうコノ手しかねえ!

 俺は拳銃をホルスターに仕舞い、狙撃銃を再び肩に掛けた。

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― 新着の感想 ―
 メェナードさん死ぬ気だったんですね。  酷いな、メェナードさんが死んだらサラちゃんはどうなる⁉️  メェナードさんはサラちゃんの一番の理解者だったはず、サラちゃんがどれ程メェナードさんを頼りにしてい…
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