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成長期と1日のご褒美。

私は黒乃スイ。

ちょっと特別な能力を持っているだけの

普通の中学2年生だ。

 


今日は確かお母さんが

ケーキを買って帰ると言っていた。

もう帰り着いている頃だろう。

早く食べたい。



私が持っているのが

「時を戻す」能力じゃなくて

「時を早くする」能力だったら、

もっと早く食べれるのになぁ。




「おーい、ソウ!

 お前、こんなところにいたのかよ!

 俺探したんだぞ!」



...誰だコイツ。

こんなやつ知らないぞ。



「あの、どちら様ですか?」



「どちら様って、

 急にどうしたんだよソウ!俺だよ!

 篠本ユウト(しのもと ゆうと)だよ!

 放課後サッカーする約束してただろ!」



...してねぇよ。

私が今日約束したのはケーキだけだよ。




...でもまぁ、

私をソウって呼んでるっていうことは、

そういう事なんだろうな。




「私はソウじゃない。

 あいつのお姉ちゃんだよ。」



「え⁉︎ お姉ちゃん...なんですか?

 ごめんなさい!間違えちゃいました!」



「いいよ。仕方ないよ。」



「それにしても、そっくりですね!

 これなら間違えちゃうのも

 無理はないかも。」




そう。無理はない。



あいつ(ソウ)と私はよく似ているのだ。


というか、

初対面では違いはほとんどわからない。


顔が似ているのはもちろん、

あいつは身長も大きい方ではないし、

性格もおっとりしている。

それに、私服や髪型など、

色々と中性的なのだ。


小さい頃はよく、

双子の姉妹と間違えられていた。


いや、今もたまに間違えられる。



「てことは、先輩って事になりますね。」



「先輩って、

 ソウと私は1歳しか変わらないんだよ?」



「それでも、先輩は先輩ですよ!

 あ、そうだ!

 お名前はなんて言うんですか?」



「黒乃スイだよ。」



「スイ先輩かー!了解です!

 じゃあまた会った時は、

 よろしくお願いしまーす!」




あいつ、いい奴なのかもな。

ただまぁ、また会いたくはない。

ああいう声の大きいタイプは苦手だ。



あ、そうだった。ケーキだ。

すっかり忘れていた。

早く帰らねば。





〜数分後〜





「ただいまー。」



「あ、お姉ちゃんおかえり。 モグモグ。」



「...ソウ、あんた何食べてんの?」



「何ってケーキだけど。」



しまった。なんてことだ。

あろうことか、

弟にケーキを食べられてしまった。

あのユウトとかいう奴と喋っていたせいだ。


「それ、私が食べる予定だった

 やつなんだけど。」



「いやいや、そんなの誰かに言うか

 何かに書くかしないとわかんないよ。」



何だと?

確かに、他の人に言ったりはしなかったが、

私は1日中

そのケーキを楽しみにしていたんだ。

それはもう私専用と言ってもいいだろう。



「あ、でもお姉ちゃんの分

 ちゃんと1個残してるから安心して!

 僕とお姉ちゃんで1個ずつね。」



「ああそう、ありがとう。」




なるほど。

気が利くじゃないか弟よ。


だが駄目だ。

私は全部食べたかったんだ。




「でも残念。

 1個じゃとても満足できない。」



「え?」




もうあの手しかないな。

時を戻すしかないな。


これはくだらないことじゃない。

楽しく1日を終えるために必要なことなんだ。



時よ、戻れ。













「おーい、ソウ!

 お前、こんなところにいたのかよ!

 俺探したんだぞ!」






篠本ユウトとの会話が始まる前に戻した。




そして、私がケーキを食べる為に

とるべき行動は...





「ソウじゃない。私黒乃スイ。

 ソウのお姉ちゃん。1個上。

 あなた篠本ユウト。ソウの友達。

 それじゃ!」




...これである。

そしてもちろん

こんな返答をされた相手の反応は...





「...は?」





これである。





「でもまぁ、いっかー!

 サッカーしに行こうっと!」





ありがとう篠本ユウト。

お前がそんなキャラで助かった。





そして私は...

全速力で帰る!






〜数分後〜






「ただいまー。」



「おかえりなさい、ソウ。

 遅かったじゃない。 パクパク。」



「あれ?お姉ちゃん何食べてるの?」



「ケーキだよ。 パクパク。」



「美味しそう!僕のはどれ?」



「あー、ごめん。

 この一口で全部終わりだわ。」



「え?嘘でしょ?」



「嘘は嫌いだから。」



「...わかったよ。我慢する。」




すまない、弟よ。 

私の為なんだ。




「    ...パクパク。」


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