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うわっ、金魚が引きこもった!

作者: 陸 なるみ

金魚エッセイです。今回の主役はダイちゃん。

後書きに写真を入れました。


 うちの200リットル大水槽には昨秋まで、8匹の和金が住んでいました。


 ちなみに60リットル水槽のほうにもう2匹いますが、こちらのことは過去作に書いたので、今日は割愛。


 大水槽は運動量の多い和金には適しているみたいで、8匹が揃って乱舞したり思い思いの隠れ家でうつらうつらしたり、とてもうまく暮らせていたようだったのですが、とある秋晴れの気持ちのいい日に、


 ダイちゃんが引きこもりになりました!


 それも飼い主が腰を痛めて丸々1週間の欠勤中に。


 よしてくれよ、こっちは立ち上がるだけで腰が痛いんだよ~

 85歳の母に負けないくらいによたよた歩いてるんだ、水を汲んで隔離用水槽を整えるだけで大ごとです。


 本人ならぬ本魚のダイちゃんはこちらの都合などお構いなし。


 細長い壊れた植木鉢を塔に見立てて水中に立てているのですが、そこに入って出てきません。


 他の魚も、食べ物を探しに入ることはあっても方向転換して出てきますし、4時間も入ったままなんて前代未聞。


 ダイちゃんは暗いほうに顔を向け、私には背中と尾びれを見せて振り向きもしない。


 午後の5時から夜9時まで、気合の入った引きこもりです。


 身体が弱って水流が嫌なのか、誰かにいじめられているのか。


 特に病気はなさそうですし、背びれも尾びれもピンと張って、元気そうではあるんです。


 ただ、塔の中から出てこない。


 塔の入り口までダイちゃんをイジメにいく子はいないようなので、その夜はとりあえず、そのままにして就寝。



 この隙に、ダイちゃんのキャラ紹介をしておきましょう。


 名前の由来は、幼い頃から一匹だけ橙色だったから。


 元々は、初めて買った初心者用金魚飼育セットの20リットルあるかないかの小水槽で、ギンちゃんと住んでいました。


 ギンちゃんは他の子より黒さ加減が薄く、銀色に見えたという、どちらも安直な命名。


 体長3センチ程度の2匹は仲良しでしたが、200リットル大水槽の入手とともに、庭の水鉢にいた5匹と共にそちらにお引越し。


 するとふたりの性格の違いが明らかになりました。


 ギンは、尻尾の長いコメット型、大水槽の広さがとっても気に入ったようで、フィルターの作る水流に戦いを挑んだり、浮いている餌を追いかけて食べるなど、活動量の多いこと、多いこと。


 ダイは広いところに移っても我が道を行くで、餌も水面までは食べに来ない、水槽の底の方で待ち受けています。


 1年も経たないうちに、ギンはヌシについで2番目に身体の大きい体長6センチに達しましたが、ダイはいつまでたっても4センチくらい。


 というわけで、ダイちゃんは、シャイというのか食が細いというのか、どうも生存競争を勝ち抜きそうではないのです。


 ーーそれで、引きこもり?


 翌朝、いつもの時間8時ごろに、餌を手にして水槽の前に立つと、全員がわらわらと前面に集まってきました。


「ごっ飯、ごっ飯、ごっ飯~」


 と、身をくねらせて踊ってくれるのですが、安心したことにダイちゃんもそのダンスに参加しています。


 ーーなあんだ、塔に閉じ籠ってみたかっただけ?


 と、一度は安心したのですが、午後になってまた同様に塔の割れ目に頭から突っ込んでお尻をみせること1時間。


 ーーわぁった、わかったよぉ。


 過去にギンとダイが住んでいた小水槽を予備の水草入れにしていたのですが、洗って水替えして、ダイが住めるように整えることにしました。


 腰は痛いけど。


 大水槽からダイを掬い出すのも一苦労でした。


 他の7匹が別方向に居る時に、板でダイだけを孤立させ。


 水をある程度減らしても元々水深があり、水槽がキャビネットの上に載っていて高いことも手伝って、掬い網が操りにくいのです。


 予想より元気に逃げまわってくれるし。


 イジメられて弱っていた別の子、テンコを掬った時より苦労しました。


 ーーダイ、それだけ元気ならダイジョブじゃね?


 とも言いたくなったのですが、追いかけ回して私がイジメている気がしてくるし、でもここでやめたら引きこもりに舞い戻りだと心を鬼にして、何とかお引越ししてもらいました。


 それから早4か月。


 ダイちゃんは日がな一日、小水槽の床掃除をしています。


 びゅんと泳ぐつもりは全くない様子で、琉金や出目金のような生活態度。

 同じ水槽に隔離したテンコが元気になった時、水槽が狭すぎるとすぐ思ったのですが、ダイはのんびり泳くので、安心して見ていられます。


 視覚か嗅覚が少し弱いのかもしれないのですが、マリンスノーのように餌が降ってきても、浮遊中に掴まえて食べようとはしません。


 底にあるのを食べたい。


 餌が投入されると同時に我勝ちに食べようとする、他の魚たちとの競争を恐れてのことではなかったようです。


 飽くまでマイペースではあるのですが、活発に水槽の隅や隠れ家の植木鉢、水草の根元をつんつんしまわって、食欲は旺盛。


 たまに、壁に映る自分の姿をぼうっと眺めていて、哲学でもしているような「考える魚」になっちゃってます。


 所用で2週間家を空けましたが、玄関を開けて3つの水槽に目をやって、もし死体がぷかぷかしていたらダイちゃんだと覚悟していましたが、しっかり一回り大きくなっていました。


 こいつ、かなり強かでもある。


 取りあえずこの冬は、ひとりでのんびり暮らしてみようね、と話しかけているこの頃です。




ー了ー


挿絵(By みてみん) 

元気だよ。小水槽は透明度が高くて、向こうのガラクタが見える、恥ずかし~

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― 新着の感想 ―
よかったよかった( ˘ω˘ )
金魚の引きこもり!? 魚にそれほど個性があるなんて思いもしなかったです。 お魚の飼育も奥が深いんですねぇ。
 お邪魔いたします……、  ダイちゃんは大丈夫ですよ!   たまにこっそりしたくなる、マイペースさんなんですね。
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