【第二十九話】エイトのその後__
あれから数十年、オレはある夢を叶えようとしていた。
それは"動物園をつくる"という夢だ。
この世界では動物カフェなるものは当然のように存在しないものの、動物園でさえもなかったのだ。
動物は獣、といった概念が強くあり、あまり動物と触れ合ったりするような文化が生まれてこなかったのだと思う。
しかし、この世界の人にも動物と触れ合うことの楽しさや、動物のかわいさを知ってもらいたい。
そんな思い出でこの、"動物園"という夢を掲げたのだ。
当然、その夢を持った時には叶えられるとは思ってもみなかった。
しかし、ダンジョンを攻略した後もサラやキリナと色々な場所を巡り、人脈を広げることができたことと、"テイム"という便利な魔法を持っていたおかげで、動物園をつくることに成功したのだ。
オープンは今日の昼から。
今が昼の少し前だから、あと1〜2時間ほどだと思う。
冒険者時代に広めた人脈により、この動物園のオープンは大陸中に広まった。
しかし、動物=獣という認識だと、少しくるのに躊躇ってしまう人もいるだろう。
この動物園が良い方向に転んでくれれば、この世界の人たちの動物への認識は改まり、次第に動物と触れ合える施設が出てくるであろう。
しかし、あまりにも来園数が少ないと、この動物園の設立にそこそこお金がかかったこともあり、すぐに動物園がつぶれてしまう可能性が高い。
ただ、動物と触れ合える場所を多くしたり、イベントを企画したりしているので、一度でも来ていただければ楽しんでもらえるようにしたつもりだ。
そんなこんなであっという間にお昼になり、オープンの時間も迫ってきた。
緊張で手に汗が滲む。
「残り1分です!」
スタッフさんが声をあげる。
まだ出入り口の門が閉まっており、お客さんの姿が見えないため、どのくらいの方が来て下さっているかがわからない。
…こんなに緊張したのは、前世での大手の会社との大切なミーティングの時以来かもしれない。
そんなことを考えているうちに"約束の時"が来たようだ。
「オープンです!」
国の音楽隊の方々の、楽しげな明るい演奏と共に、重厚な門が開かれた。
すると門の外にはざっと見て10000人以上の人が集まってくれていて、門が開いた瞬間に目を輝かせ、我先にと波のように押し寄せてきた。
あっという間に園内は賑やかになり、受付のスタッフさんも忙しそうにしている。
まさかこんなにもたくさんの人たちが楽しみに待っていてくれていたとは。
驚きと感動で視界が滲む。
それと同時に、もしあの2人が来てくれていたらな、とふと思う。
でもそんな思いは叶うはずもないなと考えるのをやめた。
その時。
「エイト!!」
「エイトさん!!」
会いたいと思っていた2人が現れたのだ。
これは夢ではないかと錯覚してしまうほど、オレは混乱していた。
なぜなら2人は有名な冒険者コンビとなって、ある貴族の目に留まり、その貴族の護衛として雇われたはずだったからだ。
「なんでここにいる…っていう顔しているね。」
相変わらずサラには思考をよまれた。
そんな些細なことでさえも久しぶりで、少し感動してしまった。
「実は…。」
キリナがここにいる理由を話してくれた。
実はサラとキリナが雇われている貴族の方もこの動物園に興味を持っていて、偵察がわりに護衛のサラとキリナを任命したそうだ。
護衛は他にもいるから、その人たちに任せてここに来た、ということだった。
「それにしても、エイトさんにすごく会いたかったんです…!」
「そ、それは私だって!エイトにすごく会いたかったんだから!」
2人がオレと同じ気持ちだったことが嬉しくて、また泣いてしまいそうになる…
今日、オレは何回泣けば許してくれるのですか、女神様。
『そんなの知らん。』
相変わらず女神様はご健在だ。
『そんなことよりも、お前2人と会ったら言いたいことがあるとか言っていなかったか?』
そうだった。
もしサラとキリナにもう一度会えたなら、この想いを伝えたいと考えていたんだった。
「サラ、キリナ…ちょっといいか?」
そう言ってサラとキリナの方に歩み寄る。
2人は不思議そうな顔をして首を傾げる。
「オレ、_____。」
突然ですが、異世界もふもふしてみませんか? end.
はいっ!
これにて突もふ完結となります!
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
この作品は私にとって初めての連載であり、自分の中では一番頑張った作品です。
忙しくてなかなか投稿できない時期もありましたが、完結まで頑張ってこれたのは読者様のおかげです。
約1年間、ありがとうございました!
これからもひだまりをよろしくお願いします!




