【第二十八話】サラとキリナのその後__
エイトとダンジョンを攻略してから数十年。
私たちは『最強獣人コンビ』と呼ばれていた。
というのも、キリナと私はエイトと別れてからも旅を続けていた。
ある時は竜が出たから討伐してほしいと言われ命懸けで戦い、ある時はクエストをこなしてギリギリの生活を送り、ある時はキリナが詐欺に遭って連れ去られそうになり…。
すごく慌ただしい日々を送ってきた。
そしてついには国で一番位が高い貴族の方に声をかけられた。
条件も良かったため、その護衛の仕事を引き受けた。
護衛の仕事に慣れてきたある日。
私たちを雇ってくれた貴族_ジェルダ公爵という_がある噂を私たちに教えてくださった。
「今大陸中で広まっている、獣と触れ合えるドウブツエンという場所ができる、という噂は知っているか?」
"獣と触れ合える"
その言葉を聞いた瞬間、あいつだ、と気がついた。
キリナも気づいたようで、私と目が合った。
「…いえ、存じ上げません。」
「実は…そのドウブウツエンというものに少し興味を持っていてな…偵察がわりに行ってきてはもらえないだろうか?」
その言葉を聞いた瞬間、飛び上がりたくなるほど嬉しかったが、公爵の前でそんな失態を見せるわけにはいかないと思い、グッと我慢した。
…キリナは頬が緩むのを抑えきれていなかった。
そこでふとある疑問が浮かんだ。
「…なぜ私たちに?その間の護衛はどうされるのですか?」
公爵は少し考える素振りを見せたあと、口を開いた。
「実はな、シャルが『ドウブツエンというものをつくった人はサラとキリナの知り合いだそうです。2人ともその方のことをたくさん話していましたから、よほどその方のことが好きなんでしょうね。』と言っていたからな。」
シャルというのはジェルダー公爵様のお付きの方だ。
にしてもシャルが公爵様に言ってしまうとは。
恥ずかしくて、顔がすごく熱い。
「護衛は他にもいるからな。そいつらに任せるつもりだ。まぁ、念のためあまり外には出歩かないようにする。」
それを聞いて少し安心する。
いつにここを出るのだろう…?
それまでに護衛の仕事で、私がやらなければいけないことは終わらせておかなきゃ。
「では頼んだぞ、サラ、キリナ。」
「「はいっ!」」
**
数週間後。
私たちは大きな屋敷の前で大荷物を持って立っていた。
門の前には公爵様に仕えている使用人などがズラッと並んでいる。
なんと公爵様までもが私たちのためだけに見送りに出向いて下さった。
「行ってらっしゃいませ!」
たくさんの人からの見送りの言葉と共に、馬車に乗って出発する。
流石にこの大荷物だと、いくら私たちといえども徒歩はキツかった。
馬車に揺られながら期待と緊張を胸に、これまでの日々を思い返す。
思い出を振り返っているうちに、気がつけば目的地に到着していた。
大きな門の前に集まる大勢の人々。
中には有名な冒険者や貴族も見え、オープン初日からすごい人気のようだ。
門はいつ開くのだろうかと、この場にいる全員が思っていることだろう。
その時、明るい演奏と共に門が開かれる。
門が開くと同時にエイトの姿を探す。
ずっと…ずっと会いたかった人が目に映った瞬間、走り出す。
「エイト!!」
「エイトさん!!」
私たちは叫んだ。
やっと、やっと会えた。
嬉しさで今までにないほど、胸がいっぱいになった。




