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雲をつかむような話
雲をつかむような話をしよう
三日月の爪
黒い指
天まで届く
土から生えた大きな手
並んだ指に絡む糸
広がる網の目の向こう
あちらと
道端に寝転がる人がいた
私は言った
大丈夫ですか
その人は言った
崩れたモルタル
散らばるタイル
塀の下の緑の草に
白い
大丈夫です
それだけ
雨降る夜に置いてきた
もう何年も前のこと
塀を作る人がいた
私は言った
どうして
その人は
草はすっかり抜かれてた
モルタルは片付けられていた
茶色の地面に茶色のタイル
崩れたまま
多分
仕事だから
それだけ
私は通り過ぎるだけ
こちら
手を伸ばす
指を掛ける
爪はどこかへ飛んでった
塀の上によじ登る
網の上に顔を出す
雲なんて一つもないじゃない
雲なんて一つも




