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第93話 - コンテナ船

コンテナ船へと侵入した瑞希たち。近藤も遂に動き出す!!

 和人は既に瑞希、金本、町田と合流し、大型コンテナ船の上甲板へと侵入、操舵室の制圧に成功している。4人は操舵室付近に設けられている船長・機関長・航海士居住エリアで話し合いをしている。


「コンテナが多いお陰で隠れるのは簡単だな」


 金本がコンテナ群を見下ろしながら呟く。

 大型コンテナ船の上甲板には大量のコンテナが積み込まれており、それを遮蔽代わりにすることで近藤組の見張りから逃れることを簡単にしている。


「おそらくコンテナの中身は密漁した魚介類やドラッグの他、大量の違法物資だろう。行き先は国内の違法団体や場合によっては海外か……。この辺のことも取り調べて一網打尽にしたいところだな……」


 町田は積まれた大量のコンテナを見ながら呟く。一方で瑞希は結衣と萌の救出のために船内部のことを考えている。


(上甲板は身を潜め易いけど、結衣ちゃんと萌ちゃんがいる船の内部は難しくなりそう……)


 萌と結衣が捕らわれている大型コンテナ船は上甲板を1階として、階下に進むほど階数が増えていき、全部で8階まで存在する。2階はさらなる物資が積み込まれるエリアで3階は救護室、酸素室、防災室、事務室、4階はジム・娯楽室、5階は一般食堂と厨房、6階は食料庫、空調設備、そして7階と8階は居住区エリアとなっている。

 和人は船内部の複雑な構造をXR(クロスリアリティ)機能で確認しつつこれからの動き方を考える。

  

(セオリー通りに考えるなら瑞希が複写(コピー)した〝私とあなたの秘密シークレット・フェイス〟で先陣を切ってもらうことだけど……)


「瑞希、サイクスの残量は大丈夫なのか?」


 和人は瑞希の様子を伺いながら尋ねる。


「私は大丈夫だよ。頭痛も治ったし」


 瑞希は〝アウター・サイクス〟や〝インナー・サイク〟を駆使することによってサイクスの消費抑制と回復に努めたものの、〝空想世界(イマジン)〟による想定外のダメージによって残量は26PBにまで減少している。この数値はサイクス量が相対的増加傾向にある瑞希であっても、上野菜々美との戦闘開始時よりも少ない残量となっている。 

 〝私とあなたの秘密シークレット・フェイス〟を使用することで残量は20PBを切る。その場合、瑞希はp-Phoneを解除することも選択肢に入れて動いている。


(ギリギリまでp-Phoneを使うとして〝私とあなたの秘密シークレット・フェイス〟はあと2回が限界。それだと戦闘特化の〝病みつき幸せ生活(ハッピー・ドープ)〟が使えなくなっちゃう。それぞれ1回ずつ使うとしたら〝私とあなたの秘密シークレット・フェイス〟は近藤に対して使いたいからできれば潜入には使いたくないし……)


「よし、瑞希はなるべく超能力(ちから)を温存しよう。敵勢力の排除も俺たちがやる」


 和人は瑞希が言葉とは裏腹にサイクス残量がギリギリであることを察し、正攻法での近藤組の排除を提案する。


「私は大丈夫だよ?」

「最終的な標的は近藤、そして2人の救出だ。そのために温存しといた方が良いだろ? 近藤は強いし」


 瑞希はすぐに和人が自身の心配をしていると察知する。軽く「ありがとう」と告げた後に町田、金本、和人に続いて船長室を出る。


#####


(中本の〝覗き屋(ピーク・ピーク)〟が発動せんな)


 近藤は萌と結衣を捕らえている部屋から出た後に中本と連絡を取り、コンテナ船へと向かうように指示している。中本が200メートル圏内に入ると自動的に発動するはずの〝覗き屋(ピーク・ピーク)〟が出現しないことから異常を察知する。


(船着き場の様子を見に行った皆藤も帰ってくる気配がない。何かが起こっとる? 最悪の事態を想定するべきやんな。皆藤は何者かに敗れ、そいつは既にターミナルに潜んでいる。いや、この船にいる可能性も考えとかなな)


 現在、近藤は居住区7階にある705号室に滞在している。そして萌と結衣は階段への入り口部を隔ててそれぞれ704号室と703号室に捕らえられている(近藤が704号室と703号室の間にある壁を破壊したために実質一室状態になっている)。


 近藤は各階の至る所に〝捕獲機雷〟、〝探知機雷〟、〝衝撃機雷〟を仕掛けており、侵入者が来たら察知できるように対策をしている。


(今のところ機雷は起動しとらんが……。皆藤や中本を撃破するような奴だ。〝レンズ〟を駆使した戦法は基本やろうな。回避されていると考えて良いやろな)


 近藤は〝第六感(シックス)〟を苦手としている。さらに海中での戦闘におけるダメージによって〝第六感(シックス)〟の発動そのものにも負担がのしかかる状態である。そのため、中本の〝覗き屋(ピーク・ピーク)〟を頼りにしていたが、本人が現れないことで近藤の精神に若干の焦りが生じ始める。


(まず敵は単独か? 単独ならばここで待ち構えるのは有りだが、複数を相手にする場合、この狭い空間じゃ闘い(にく)い。もちろん派手に爆破させて水中戦に持ち込んでも良いが、味方の犠牲が増えることや動物と話せるガキに逃げられるリスクを考えるとそれは避けたいな……)


 〝人間潜水艇(イエロー・サブマリン)〟は水中において威力を発揮することは事実だが、水分さえあれば地上戦においても強力であることを近藤は最大の利点であると認識している。


(それならこちらで先制して確実に1人削った方が良いか。船底付近で船の重要パーツに被害が及ぶことを回避するためにも上甲板での戦闘が理想的か。船で逃げることも可能やしな)


 近藤は意を決すると部屋を出て上階へと向かう。


「近藤さん! 今から丁度部屋に行こうと思っとったんです!」


 近藤がエレベーターを待っていたところで2人の部下が慌てた様子で声をかける。


「おう、どうした?」


 2人は息を整えながら話し始める。


「ターミナルの連中との連絡が全くつかないんです! 管理棟も!」


 近藤は部下に落ち着くよう促しながらそれに答える。


「中本にもこっちに来るように言ったんやがいくら何でも到着が遅過ぎる。俺も様子を見に行くとこやったんや。犯人はおそらくもうこの船にいるぞ。しかも相当強いやろうな」


 2人は近藤の言葉にゴクリと唾を飲み込み、緊張が走る。


「お前らついて来い。上に行くぞ。罠があるかもしれんけん〝レンズ〟は発動しときぃよ」


 指示された2人は頷き、近藤と共にエレベーターへ乗り込む。近藤はあらかじめで設置していた〝探知機雷〟が発動して見つけた侵入者を〝捕獲機雷〟で捕らえたことを察する。


(見つけた。こいつは非超能力者やな。やはり複数人いる。俺の判断は正しい)


 近藤はニヤリと笑い、上甲板へと向かう。


 機雷が発動した瞬間、瑞希、和人、町田はその異変に気付いたが、非超能力者である金本は反応することができずに〝捕獲機雷〟に捕らえられる。その後、周囲の〝衝撃機雷〟が起動して金本が吹き飛ばされる。


「金本!!!」


 その衝撃と叫び声に気付いた見張り数人は、すぐさま現場に確認に向かい、3人を包囲しにかかる。3人はコンテナを遮蔽にしつつ移動するも追い込まれていく。

 その時、3人の背後にそびえるエレベーターの扉がゆっくりと開き、中から近藤が姿を現した。







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