表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミックス第1巻発売中!】TRACKER  作者: SELUM
夏休み前編 (超能力者管理委員会編)
58/172

第57話 - 興味

突然月島家を訪問し、去った葉山。瑞希は彼に少なからず興味を抱いた。


そんな葉山の行動が気になる石野たち日本光明党。様々な思惑が交錯する......!!

 秘書の尾上は車窓から見える景色を眺めている葉山をちらっと見ると少し咳払いをした後に尋ねる。


「わざわざ〝超常現象(ポルターガイスト)〟を使ったのも何か考えがあったからですか?」


 秘書の尾上が葉山に尋ねる。


「何がです?」

「あの、携帯を落とした時ですよ。いつもならわざわざお使いにならないじゃないですか。常に〝インナー・サイクス〟で自分のサイクスを隠しているのに……」

「単純に手を伸ばすのが面倒くさかったんですよ」


 葉山はそう答えた後、訝しんでいる尾上の表情を見て付け加える。


「あはは。でも瑞希さんも色んな意味で興味を持ってくれたんじゃないですか?」


 尾上は葉山の返答を聞いた後、これ以上ははぐらかされるだけであること、そして葉山に何か目的があることだけは分かったので、それ以上は詮索することを止めた。


#####


 ––––葉山順也:日本月光党に所属し、超能力者管理委員会の委員長を務める。第一東京別教育機関への在学中、わずか13歳で東京第三地区大学に史上最年少入学。サイクス遺伝学を専攻し、首席で卒業。その後は当大学の研究機関に在籍し……


「やっぱり……」


 葉山が月島宅を後にしてから瑞希は自室で葉山順也について調べている。


(葉山さんのサイクス、福岡にあるお父さん、お母さんのお墓やお祖父ちゃん・お祖母ちゃんのお家で見たことあったんだよね。お母さん東三大で教授やってたし、サイクス遺伝学が専門だったはず……このサイトには研究室の名前書いてないけど十中八九、月島研究室だったんじゃないかな……)


 葉山が〝超常現象(ポルターガイスト)〟を使った際に発した黒いサイクスを福岡にある両親の墓前で見覚えがあったこと、そして葉山が自身も残留サイクスが見えることを示唆したことで瑞希の中で彼に対する興味が湧いていた。


(今度、福岡行った時にお祖父ちゃんとお祖母ちゃんに聞いてみよっかな?)


 ––––ピコン


 瑞希の携帯の通知音が鳴る。


––––みずちゃんまだー?


 萌からのメッセージに少しフッと笑った瑞希はすぐに返事を返す。


––––今から戻る〜!


 瑞希は返信した後に志乃から渡されているイヤホンを耳に装着し、〝空想世界(イマジン)〟へと戻って行った。


#####


(結局、今回で北海道・東北の面々は決まらず終いだったな……)


 超能力者管理委員会を終えて日本光明党本部に戻った石野が右手で顎をさすりながら思考する。


(現在の先天性超能力者の出生率を考えて大阪や京都が含まれている近畿地方は日陽党の島田議員と日月党の野本議員の旧与党と現与党が取り合ったことは納得できる。ただ面積の広大さ、最近の出生率の伸びという観点から北海道・東北地方が争点になると葉山議員は読んでいたはず。彼がそのポテンシャルを見逃すとは思えないのだが……)


 曽ヶ端が石野に缶コーヒーを手渡しながら声をかける。


「何か気になることでもあるの?」


 石野は軽く礼を言い、蓋を開けて軽く一口飲んだ後に一息ついてから答える


「いえ、葉山委員長が今回、近畿地方と北海道・東北地方が最初の争点になることは分かっていたはずなんです。でもそれを飛ばしてまでの私用って何なんでしょうか? それに……」


 石野はまだ何かを考え込んでいる。


「それに?」

「いえ、葉山委員長は一体どこへ行っていたのかなと」


 曽ヶ端は野本の発言を思い返しながら答える。


「野本議員は確か……警察や内務省との連携を深めるのが急務とか何とか言ってたわね」

「それらしいこと言ってごまかしてるだけだと思うんですよね」

「私もそう思うわ。そもそも〝不協の十二音〟が関わった事件から1ヶ月経っている。今さら連携をなんて動きが遅過ぎるわ。彼のような(したた)かな人間がこの大きな問題を放置するかしら?」

「彼がどこへ行っていたか気になりますね……」


 後ろからコツコツとヒールの音を響かせながら1人の女が近付き、立ち止まる。


「私の出番ですね」


 石野と曽ヶ端の会話にもう1人、超能力者管理委員会に光明党から派遣された木戸(きど) 香織(かおり)が加わる。


「木戸さん……しかし議院規則で超能力の使用は禁止されているのでは?」


 石野が木戸の方を振り向きながら返答する。


––––議員規則第四条

 国会議員は如何なる理由においてもその他の議員に対して超能力を使用することを禁じる。


「〝議員〟に対してはね」


 3122年となった今日(こんにち)、国会形態は大きく変化し、オンライン形式、又は仮想空間を創り出す超能力者によって運営されている。そのため、国会議員は当選地区で活動することで地方の意見や地方自治体の声を直接全国の場で発表することを容易にした。

 現在、全国的に散らばる国会議員を一堂に会するほどの強力な超能力を持つ者が不在のため、基本的にオンライン形式で国会は行われる。党首討論は現総理大臣である早野幹久の超能力で創り出した仮想空間で行われている。

 この議院規則第四条に関しては様々な議論が行われており、超能力の使用自体を禁止するように要求する者もいる。しかし、過去の事例や早野の超能力(ちから)から矛盾が生じるという懸念もあり、現在まで続いている。


 木戸が2人の側を離れた後、石野は曽ヶ端に告げる。


「大丈夫ですか?」

「グレーゾーンであることには変わりないけど……逃げの口実はあるからね」

「そうですか。サイクスを持たない自分には分からないのですが……」


 木戸香織は物質刺激型超能力者で固有の超能力・〝あなたはどこへ(オン・ユア・ウェイ)〟は車両に対して発揮する超能力である。

 ターゲットとする車両のナンバープレートと車種、メーカーを特定、その情報をサイクスに込めて自身が使う車両のハンドルに触れると対象車が最後に向かった目的地へと自動運転を開始する。また、木戸は既に覚醒した超能力者で、対象車に直接触れることで特定の日時に向かった行き先を知ることが可能となった。木戸は自身の超能力をいつでも利用できるように既に委員会メンバーが使用する車両の車種とメーカー、ナンバープレートを認知している。


「葉山委員長がいつも使用している車はこれね。YOKOTAのプリンス。ナンバープレートは……」


 木戸は自身の車内で携帯内のメモを眺めている。


「東京第三、分類番号は300、〝あ〟の91–62。彼が最も利用する車両はこれね。まぁ、付き人含めて全て調べているからしらみ潰しになるかもしれないけど……」


 木戸はサイクスを発しながらハンドルを握った。


––––〝あなたはどこへ(オン・ユア・ウェイ)〟発動!!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ