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【コミックス第1巻発売中!】TRACKER  作者: SELUM
政府からの手紙編
16/172

第15話 - 1通の手紙

戻ってきた日常。

そんな中で感じた瑞希の変化。そして政府からの手紙とは!?

 瑞希が再び学校へ登校し始めてから1ヶ月が経った。休学明け当初は、微妙な空気が流れたクラスメイトとも休学する前と同じ関係に戻り、普段と変わらない日常が帰ってきた。


「瑞希〜、暇じゃない? またこう、スリルのある闘いはないかなぁ」

「ピボちゃん、あんな危険な目に毎回遭ってたら命がいくつあっても足りないよ」

「そんなモンかなぁ? ボクと瑞希ならどんな困難も乗り越えられると思うけどなぁ」


 瑞希がピボットと談笑していると瑞希たち1年1組の担任でスケジュール調整のためにしばらくサイクス学の担当を務めている内倉(うちくら) 祥一郎(しょういちろう)から実技の手本として指名された。


「それじゃあ月島さん、前に出てきてこの石を30センチくらい動かしてくれるかな?」


 内倉は石を指差しながら瑞希を指名した。瑞希は「はい」と返事した後、すぐに前へ行って手にサイクスを込めながら石に「動け」と念じた。


(あ……れ……?)


 瑞希は違和感を感じたものの石は問題なく30センチほど右にずれた。教室からは「おぉ」という感嘆の声が漏れる。


「月島さんありがとう。いいかー、月島さんは簡単にこの石を動かしたけど今回の〝超常現象(ポルターガイスト)〟の実践は先週の消しゴムより重さがあるから込めるサイクスの量も意思の強さも強くしないといけないぞ。最初から30センチ動かすのは厳しいだろうから石を振動させることから目指せよー」


 生徒たちは返事をすると石を受け取ってそれぞれ自分たちの机の上で手をかざしながら〝超常現象(ポルターガイスト)〟に取り組み始めた。


「瑞希、さすが!」


 同じ班の西条綾子が瑞希に声をかける。


「ありがとう……」


 少し浮かない顔で瑞希が答える。しかし、その様子に気付かないまま綾子は続ける。


「月島さん、本気出したらもっと動かせるんでしょ?」

「うん。多分……」


 そう瑞希が答えると綾子は「すごいなぁ」と呟くと机の上で〝超常現象(ポルターガイスト)〟を始めた。


「瑞希、何か気になることがあるみたいだね」


 前回の授業よりもレベルが上がった内容に四苦八苦している同級生たちの様子を眺めている瑞希にピボットが直接頭に話しかける。


「うん。これくらいの〝超常現象(ポルターガイスト)〟なら7歳くらいの時には余裕でできてたのに今やってみたらいつもよりちょっとキツくて」

「どうしてだと思う?」

「うーん、疲れてるなんてことはないし……」


 ピボットは少しイタズラっぽく笑いながら親指で自分を指している。


「あっ!」

「そう。瑞希今皆んなにお手本を示した時、ボクを具現化したままだったよね? ってことは50PBの状態だったんだよ。それはつまり瑞希は今までの1/4のサイクスで〝超常現象(ポルターガイスト)〟を起こさないといけないんだ。相対的にとってもやり辛さを感じるはずだよ」

「もっと少ないサイクスで使えるようになりたいなぁ。このままじゃすぐにサイクス切れ起こしちゃう。てかピボちゃん勝手に出てこないでよ」

「そんな意地悪言わないでよ、瑞希ー。ボクだって寂しいんだ」


 瑞希は少し苦笑いしつつ考え込んだ。


(これまでとサイクスの扱いが変わってくるとなると慣れが必要になってくるなぁ。暇なときにp-Phoneを出して練習して感覚慣れさせないといけないなぁ)


 瑞希は自分にとっての新たな課題を感じ、これまでの自分との感覚のズレの修正をしようと心に決めた。



#####



 既に瑞希は帰宅し、入浴して湯船に浸かっている。


「瑞希〜、p-Phone裏返しにしないでよ〜」

「嫌よ、ピボちゃん男の子でしょ。具現化したままなの許可してるだけでもありがたく思ってよね」

「良いじゃーん」

「サイテー、スケベ、エロマスコット!」


 瑞希は目を細めながら横にバスタブの淵に裏向きに置かれたp-Phoneを非難がましく見る。


「心配すんなよ、瑞希。瑞希の小ぶりなBカップなんて見ても何も感じないよ」

「何で知ってんのよ!!」


 瑞希は顔を真っ赤にして胸を隠しながらp-Phoneを掴んで浴室の床に投げつけ下唇を噛みながらp-Phone目掛けて勢いよくシャワーを浴びせた。


「しっかり画面を地面に向けて投げつける辺りナイスコントロール」

「うるさいわね、反省しなさい」

「まぁボクは痛くないし、防水だから大丈夫だけどね」

「サイッテー」


 その時、外で微かに家のチャイムが鳴り、翔子が応対している声が聞こえた。


「もう8時とかだけど誰が来たのかなー? また事件があったのかな……」

「そうやって興味を持つ辺り瑞希もスリルを求めてるんだよ」

「うるさいわね、そこで反省してなさい」


 今度は冷水をp-Phoneに浴びせかける。「やれやれ」とピボットは黙り込んだ。


 瑞希は風呂から上がると肌や髪の毛の手入れを一通り済ませた後、洗面所を出る。するとそこには何やら愛香と訪問者の少し言い争う声が聞こえた。1人は玲奈の声だ。


(玲奈さんともう1人は……聞き覚えある声だな)


 瑞希がゆっくりとリビングの方へ向かうとそこには坂口玲奈と退院したばかりの徳田花が愛香と少し言い争っていた。


「愛香、あんた政府からの書簡無視してるでしょ! それどころかまだ瑞希ちゃんにも話してないだなんて!」

「前にも言ったでしょ! 私はみずを危険な目には遭わせたくないの」

「いや、そんな内容じゃないでしょ」

「嘘よ。あんなの明らかにサイクスの戦闘訓練受けさせる気じゃない。確実に『TRACKERS(トラッカーズ)プロジェクト』にみずを含めてる! あの子まだ15歳よ!? 高校生になってまだ半年も経ってない!」

「〝TRACKERS(トラッカーズ)〟って何……?」


 瑞希は恐る恐る尋ねた。

 愛香、花、玲奈、翔子は瑞希の方を向く。


「みず……あんた2階の部屋に行ってなさい」


 愛香が瑞希に指示しているところを花が制止する。


「いいえ。月島さ……月島瑞希さん、あなたに日本政府から書簡が届いてるわ」

「ちょっと花さん!」

「これはしっかりと瑞希本人が目を通すべきよ」


 花が愛香をたしなめる。愛香は花から1通の手紙(タブレット型である)を受け取ってそのデータを空間に広げる。



『日本政府は月島瑞希(15)をサイクスの応用訓練に特別に受講させることを指示する。そしてこれはこの者の超能力に合わせた特別なプログラムである』



 瑞希は驚いた表情で愛香の方を見ると同時に、愛香は目を背けた。




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