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【コミックス第1巻発売中!】TRACKER  作者: SELUM
番外編②後編 - GOLEM / SHADOW編
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番外編②-8 – 合同捜査本部

不協の十二音・合同捜査本部の招集。番外編後半スタート!

 サイクスの出現以降、日本の省庁は再編されて警察組織は内務省の所属となった。警察組織には生命に関わる犯罪行為を取り締まる主な機関として刑事部、組織犯罪対策部、公安部の3つが存在する。

 その中でも捜査一課は(1)殺人、傷害その他生命身体に係る犯罪の捜査、(2)強盗及び強姦に係る犯罪の捜査、(3)放火及び失火に係る犯罪の捜査、(4)科学捜査、(5)部内他課の分掌に属しない犯罪の捜査を担当している。対して組織犯罪対策部は主に暴力団が関わる犯罪を取り締まることを目的とし、また、公安部は国家体制の維持を目的にした組織で、暴力によって国家転覆を図る組織の監視を主な目的とした活動を行う。

 しかし、ここ数年における強力なサイクスを持つ超能力者の増加の伴って凶悪犯罪の割合が増加し、各組織の垣根を超えて協力体制を敷くことが増えてきている。これを可能とする主な理由として警視庁、日本の警察組織において現役最高戦力と目される捜査一課長・藤村洸哉の存在が大きい。先のDEEDの麻薬オークション取り締まりにおいて藤村が協力したことは分かり易い事例である。


 日本国内の犯罪組織、テロリスト、凶悪犯罪者はその凶悪性、影響力を考慮して危険度を下からD、C、B−、B+、A−、A+、Sの7つのカテゴリに分けられる。例えばDEEDは最も戦闘力の高い横手イルマ(推定危険度:A−)を擁するものの武闘派超能力者は少ない。しかしながら麻薬オークションを開催できるほどの資金力や海外を含む他組織とのパイプを考慮して危険度をB+として設定された。

 基本的にこうした犯罪組織はその憂慮される内容によって組織犯罪対策部もしくは公安部が担当するものの、対象となる犯罪組織の危険度がA以上の場合、刑事部(特に捜査一課)、組織犯罪対策部、公安部の合同捜査部が設置される。合同捜査のメンバーは対象となる組織の特性によって各部で選抜される。


 『不協の十二音』全員が揃った破壊活動は4年前のサイクス第一研究所襲撃事件のみであるものの、その事件の衝撃と一部メンバーによる破壊活動から危険度は最高ランクの〝S〟に設定された。

 個人としてはJOKER(ジョーカー)JESTER(ジェスター)のその好戦的な性格から危険度Sとされた。そしてそれらを束ねる存在であるとしてMAESTRO(マエストロ)も危険度S、また、先日の第三地区高等学校においてその広範囲の超能力からMOON(ムーン)も危険度Sとして設定された。その他メンバーに関しては詳細が分かっていないものの、4年前の事件資料から危険度はA+以上の判定で扱われている。不協の十二音に関する情報が更新される場合、『不協の十二音・合同捜査本部』において緊急会合が開かれ、情報が共有される。


「これから不協の十二音・合同捜査本部、合同会議を始める」


 号令をかけたのは警視総監・太田(おおた) 正博(まさひろ)。彼を中央にして右隣には公安部長・野村(のむら) (みのる)、左隣には組織犯罪対策部長・石川一志、さらに石川の隣には警視庁捜査一課長・藤村洸哉が着席する。彼らの眼前には多数の捜査官が着席し、4人を注目する。

 部屋の最後尾には笑顔を浮かべる超能力者管理委員会委員長・葉山順也と副委員長・白井康介、内務大臣・今村(いまむら) 研二(けんじ)、前内務大臣・木村栄治の3人が葉山とは対照的に険しい表情でその様子を観察している。


「すげぇ、注目度だな」


 数多く座る捜査官たちの中で丁度、中間付近に位置する瀧慎也は後ろに座る4人を見ながら小声で隣の徳田花に話しかける。


「えぇ。管理委員会の特性上、葉山委員長が来るのは予想できたけど白井副委員長に新旧内務大臣まで集まるなんて。十二音に対する注目度と脅威が窺えるわね」

「にしても……」


 瀧は藤村の方を見てからかうようにして笑う。


「課長、似合わねーな」

「ちょっと、やめなさいよ」


 瀧に注意する花も笑いを堪えており、肩が僅かに震えている。


(あいつら後で殺す)


 2人の様子に気付いた藤村は心の中でそう固く決心した時、突如として部屋の扉が開く。


––––シャンッ


 錫杖(しゃくじょう)を地面に突きながらゆったりと歩く老人が2人の若い男女に案内されながら入室する。その老人とは思えぬ凛とした美しい立ち姿と所作は、見る者全ての視線を集め、全員の時が一瞬止まる。その後、キャリアを積んだ捜査官を中心としてどよめきが広がる。


(まじか……)


 藤村、瀧、花も例外ではなく、その老人を見て驚愕する。藤村はサイクスを発さずとも分かる只者ではない雰囲気の老人を見て緊張が走る。


(俺が現役警察組織最高戦力? あぁ。その通りさ。()()()()じゃあな……)


––––霧島(きりしま) 浩三(こうぞう) 


 霧島和人の実の祖父であり、元内閣官房長官。超能力者としての実力はもちろん、その政策実行力やカリスマ性から日本の政治を永らく支え続けた伝説的な人物で、引退後は霧島道場にて武の指導やそれとサイクスの融合を図った技術を指導しており、73歳となった現在も後進の育成に尽力している。


(引退した今でもとんでもないプレッシャーだ。あの人や海洋学者でありながら海上治安維持にも尽力した月島の祖父・吉塚仁、後ろの木村栄治を始めとして伝説的な超能力者はまだまだいる。俺の勘では葉山順也……。あいつにも似たものを感じる。謎に包まれているが、その隠されたサイクスは強大だ。将来的にはこっち側に来るだろうな……)


 室内にいる全捜査官の視線が自身に集められようとも全く動じていない霧島は、全体に向けて告げる。


「突然、邪魔して失礼。個人的に興味のある内容であったので立ち寄らせてもらった。十二音とやらには孫が世話になったようなのでな。気にせず始めてくれ。私は後ろにいる」


 霧島はそう言うと後ろの方へと歩を進め、瀧の会釈に対して軽く目で返す。そのままさらに後方へと向かうと坂口の隣で車椅子に座する愛香の元に立ち止まり、「孫がお世話になっております」と丁寧に告げて2人の隣に着席する。それを確認した警視総監の太田は集まった捜査官に声をかける。


「……それでは改めて開始する。今回の件に関して藤村課長と石川部長より説明してもらう」


 石川は立ち上がると「それではまずは私から」と言ってDEEDに関する概要の説明を始めた。





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